2017年04月29日

大森靖子『kitixxxgaia』(2017.3.15)

kitixxxgaia(CD2枚組+DVD) - 大森靖子
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kitixxxgaia - 大森靖子
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kitixxxgaia(CD+Blu-ray Disc) - 大森靖子
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1.ドグマ・マグマ feat.fox capture plan ☆
2.非国民的ヒーロー feat.の子(神聖かまってちゃん)(2016.10.26 Sg.)
3.IDOL SONG ☆
4.JI・MO・TOの顔かわいいトモダチ
5.勹″ッと<るSUMMER feat.あの(ゆるめるモ!)(2016.8.24 Sg.)
6.地球最後のふたり feat.DAOKO
7.ピンクメトセラ(2016.8.24 Sg.)
8.POSITIVE STRESS(2016.10.26 Sg.)
9.夢幻クライマックス(かもめ教室編)(2016.11.2 Sg.(℃-ute )) ☆
10.オリオン座(2016.12.14 Sg.)
11.コミュニケイション・バリア
12.君に届くな(kitixxxgaia ver.)(2016.12.14 Sg.)
13.アナログシンコペーション


 『洗脳』『TOKYO BLACK HOLE』に続く、メジャーレーベル3枚目となるオリジナルアルバム。

 今作は元々『キチガイア』というタイトルでのリリースを発表したところ、この名前では宣伝が出来ないとのお達しで『kitixxxgaia』になったというエピソードが初っ端から生まれました。この時点で今まで以上に只者ではない作品になるという予感がありましたが、想像通りあるいはそれを超えたとんでもなく凄まじい作品に仕上がっています。なお複数種リリースされていますが、今回はマグマ盤収録曲のみになることをご了承ください。この13曲は全ての種類において収録されています。

 1曲目、「ドグマ・マグマ」からまず凄いです。穏やかな雰囲気のトラックを軸にして繰り広げられる極めて強い毒。展開もあちこちに飛びまくっていて、全容を解説するだけでも大変な楽曲です。ただ過激でアバンギャルドな歌詞には、メジャーデビュー以前から存在している強固なる芯にブレがないことをしっかり確認できます。作品を経るごとに音が増え、バリエーションも多彩になっていますが、言葉の表現と彼女が楽曲を通して伝えたいことは一貫しています。全体的にそうですが特に歌い出しのAメロの歌詞、これは私自身が常日頃から感じていることでもあるので共感の度合いが半端なかったです。この勢いのまま繰り広げられるのが神聖かまってちゃん・の子とのコラボ曲「非国民的ヒーロー」。冒頭から危険なほどのロケットスタートですが、2曲ともコラボ相手を含めてしっかり意味のある作品に仕上がっているのは大変重要なポイント。

 今回のアルバム最大の強烈インパクトソングが「IDOL SONG」。ひたすらアイドルの口上を歌詞に入れまくるとんでもない楽曲に仕上がっています。大森靖子が重度の道重さゆみヲタであることは周知の事実で、彼女のために作られたという「ミッドナイト清純異性交遊」はその究極とも言えるわけですが。TOKYO IDOL FESTIVALに出演したと言ってもアイドルではないドルヲタの彼女が、アイドルの生きざまと憧憬をポップに表した傑作、特に賛否が分かれる楽曲ではないかと思いますが私は圧倒的に賛・賛・賛の立場でいきたいと思います。なにせ私が大森さんを知ったキッカケが、TOKYO IDOL FESTIVALのギター弾き語りのステージだったわけですから…。ちなみにこの曲の編曲はヒャダインこと前山田健一。すごく納得。

 「JI・MO・TOの顔かわいいトモダチ」はタイトル通りの楽曲。包み隠さず本音で喋ることが出来るのが地元の親友ですが、さすがに2番の歌詞は放送禁止モノです。ただ共感できる点は非常に多いのではないかと感じます。曲調はあえてそうしたとしか思えない聴き心地良い90's売れ線ポップ。シングル曲「勹″ッと<るSUMMER」は夏ならではの熱く燃えたぎる心をそのまま楽曲した内容で、曲調はアバンギャルド昭和歌謡といったところでしょうか。「地球最後のふたり」は先日20歳になったばかりの女性ラッパーとのコラボ曲。あえてツボを外したようなメロディーと現実感のない編曲が、他のアルバム曲ともアーティストとも過去の彼女とも違う独特の異彩を放っています。

 クセになる変拍子と韻の踏み方が白眉の「ピンクメトセラ」、小室哲哉作曲の「POSITIVE STRESS」と続きます。「POSITIVE STRESS」はサビのメロディー辺り確かに小室節ですが、歌詞の個性が強いので言われないとそうとはやはり気づきません。かと言って相性が合わないということは決してなく、むしろ小室さんのメロディーでより彼女と個性が際立っていると言いますか。そんなことを感じさせる内容に仕上がっています。

 今回のアルバム最大の肝は「夢幻クライマックス(かもめ教室編)」「オリオン座」。「夢幻クライマックス」もまた、彼女が℃-uteのために書きおろした一大傑作ですが、歌詞も編曲もそれとは全く異なる内容。ピアノ弾き語りの演奏で歌う楽曲はとても儚く美しく。そこから少しずつ盛り上がっていく「オリオン座」で”生”を歌う姿は、キラキラした編曲に装飾された序盤と対になっているありのままの大森靖子を表しているかのよう。

 大森靖子的ガールズポップな趣の「コミュニケイション・バリア」を経て、「君に届くな」は弦楽器など色々な音が追加されています。ほとんどピアノがメインだったシングルとはかなり違うアレンジですね。囁くように歌うボーカルはCharaを彷彿とさせる部分もありますが、中盤のセリフはやはり大森さんならでは。ユラユラとした雰囲気の中で本作最後の楽曲は「アナログシンコペーション」。バンドメンバー全てが作曲者としてクレジットされている楽曲は、ソロというよりチームとしての集大成。歌詞は今の彼女がステージ・音楽・もっと言うと世の中にどう向き合っているかを現時点で総括しているような内容。このアルバムだけでなく、ライブでもテーマソングとしてラストに聴きたいナンバーというのが個人的な感想になります。

 今作は難解とまでは言いませんが、聴く人によって本当に大きく感想が変わるアルバムだと思います。古くから応援するファンにとっては編曲がゴチャゴチャし過ぎという評もあるようですし、普段の大森靖子を聴かない人にとってはついていけないという意見もきっと出ることでしょう。ただ3, 4年彼女の音楽を聴いている私が思うに、彼女が作り出す音楽の世界は虚構も含めて全てリアル。今までと比べると陰の要素が今作は少し薄まって、ともすると躁とまで言える明るさも入ったアルバムになっていますが、コラボレーション含め装飾が多いからこそ彼女のリアルが浮き彫りになっているような。9.〜10.で今までにないほどの凄味を感じたのは、おそらくそれが理由だと思います。大森さんがこのアルバムに込めた思いがどう受け止められるかは人それぞれとしても、果てしなく大きいこと自体は文句の言いようがない真実ではないでしょうか。私は彼女の生きざまをおおいに支持したいです。

 というわけで今作、文句なしに今年トップクラスの名盤に仕上がっています。これだけの”愛””心”を表面的でなく、リアルに心底から感じさせてくれる作品は滅多にありません。是非読者の皆さんにも、技巧などを考えるよりも”感じる”という気持ちで聴いて欲しいと、あらためて願います。

posted by Kersee at 13:55| Comment(0) | アルバムレビュー(女性J-POP) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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