
魅力がすごいよ(通常盤) - ゲスの極み乙女。

魅力がすごいよ(初回限定魅力的なプライス盤) - ゲスの極み乙女。

魅力がすごいよ(完全生産限定ゲスなトート盤)(トートバック付) - ゲスの極み乙女。
(楽曲レビュー)
1.ラスカ
アルバムのタイトルも歌詞に登場するリードナンバー。ジャズを思わせるピアノの音が鮮やか。中盤以降のベースの入れ方も渋くて、ボーカルが良い意味でただの楽器と化しているようにも感じます。でもどこか切なくも聴こえるメロディー・歌詞もグッド。全体として非常に作り込まれた名曲だと思います。
2.デジタルモグラ
地底から見た光景をモグラに見立てた歌詞が非常に秀逸。”誰が理想ってやつなんだ”と訴えかけるサビは心にグサッと突き刺さるような感覚を憶えますね。文句なしの名曲。
3.crying march
ニューウェーブを思わせるシンセサイザーの音がよく響くメロウな楽曲。間奏のピアノソロからは特に高い音楽センスを感じさせます。
4.星降る夜に花束を
ラップパートとサビで構成されたような楽曲。Bメロで延々と続く同じフレーズが特にショッキング。まだ続くと思わせて3分14秒で終わる構成もすごくよく練られてますね。
5.列車クラシックさん
ピアノとエフェクトで繰り広げられる”ガッタンゴットン”。そこからピアノソロに入って次の曲に続きます。
6.猟奇的なキスを私にして
ドラマ『アラサーちゃん無修正』主題歌でもお馴染みのシングル曲。センセーショナルなサビとタイトルも素晴らしいですが2番のサビ後の展開など曲の枝葉にあたる部分もあらためてよく作られていると感心せざるを得ない、これもまた今年を代表する名曲になっています。
7.サリーマリー
5分近くにわたる楽曲ですが聴きどころはやはり中盤のラップとその直前の間奏でしょうか。ロックバンドでここまで聴かせるベースソロは滅多にないと思いました。ピアノからも明らかにクラシックからの影響を感じますね(ラストはホントに拝借しちゃってますが)。歌詞は6.よりもずっと猟奇的な気もする悲しげな内容。
8.ruins
50秒の準インスト曲。ボーカルの囁きが入っています。
9.アソビ
「猟奇的なキスを私にして」と両A面のシングル曲。メロウな雰囲気の楽曲群が多い中で際立ってロック色強いナンバー。歌入りなのにインストっぽいという稀有な感覚。
10.光を忘れた
際立った個性が出ている楽曲が多い中でこの曲は比較的ストレートに作られた印象でしょうか。ただ全体を通して徐々に上がってくるような雰囲気はやはり絶品と言えます。
11.bye-bye 999
6分超の長い楽曲は主に語りと演奏で構成されているゆったりとした内容。THE BOOMの「手紙」を思い出させる部分もあります。歌詞はそれと全然違いますけどね。
(総評)
随分ブチ上げたとも思えるアルバムのタイトルですが、それに偽りは全くありませんでした。文字通り”魅力がすごいよ”と自信を持ってお届けしたい名盤に仕上がっています。今年はJ-ROCKのアルバムが豊作揃いなんですがその中でもトップクラスに位置する最重要作品ではないでしょうか。ミクスチャーロックという言葉を耳にするようになって十数年経ちますが、このジャンルもここまで進化したのだなとあらためて感じさせますね。
とにかく演奏・編曲の質が段違いです。ロックだけでなく歌謡曲・ジャズ・クラシックからも美味しいところを全て取り入れていますね。したがってピアノとベースの音が本当によく目立っています。特にベースに関しては数多いるJ-ROCKのバンドの中で一番個性が強いのではないでしょうか。ボーカルもクセのある声をしていて歌詞の表現・視点、何よりバンド名からしてそうなんですがこちらでも個性の強さを感じます。ただそちらの強さは演奏・編曲という土台があるからこそより引き立っているような気がしました。というわけで彼らが2010年代後半を彩るバンドになるのはおそらく間違いないでしょう。そのまま来年以降の作品にもおおいに期待したいです。