
Tree(通常盤) - SEKAI NO OWARI

Tree(初回限定盤CD+DVD) - SEKAI NO OWARI
(楽曲レビュー)
1.the bell
文字通り、鐘が響きわたるのみのオープニングSE。
2.炎と森のカーニバル
2014年の大ヒット曲その1。オープニングからファンタジー感溢れる別世界が展開されています。いわゆるセカオワワールドの中心的楽曲とも言えそうです。
3.スノーマジックファンタジー
2014年の大ヒット曲その2。この曲もオープニングの台詞からしてテーマパーク感ありあり。ディズニーリゾートの影響を音楽面で受けている、と言われても全く不思議ではないですね。”ぜんぶ、雪のせいだ。”はこの曲ではなくタイアップになったCMからの発信という印象の方が強いですが、今思えばこれ自体がセカオワ現象の序章だったのかもしれません。よく聴くと歌詞も”雪の妖精のおかげで恋におちた”というテーマで、独特の世界観の中でJ-POPのツボをしっかりついていたり。その点であらためて面白いと感じさせるナンバーでもあります。
4.ムーンライトステーション
東京・横浜に魔法をかけて幻想上の世界にしたようなナンバー。歌詞はよくよく見ると現実的な表現多数なんですがサウンドは完全ににその逆。汽笛のSEもそうですがそれ以外でも編曲で凝ってる部分がどの曲よりも多い印象ありますね。発想も良ければ出来上がった作品も作り込み多数で面白く、まさに飽きさせない内容に仕上がってます。文句なしの名曲。
5.アースチャイルド
シングル「RPG」カップリングとして収録された曲。発売時のレビューでは”ピーターパンシンドロームというフレーズを思い出させるような雰囲気”と書きました。この曲も発表はもう2年前、これも今思えば現在のセカオワの方向性を決定づけた楽曲の一つと言えるのかもしれません。
6.マーメイドラプソディー
映画『海月姫』主題歌。人魚をテーマにした楽曲ですが、その不自由さをクローズアップした歌詞は今まであまりなかったのではないかと思います。人魚を描いた楽曲は大体の場合美しい印象になるような気がするのですが、こちらは切ない気持ちの方が上回りますね。
7.ピエロ
シングル「炎と森のカーニバル」カップリング収録曲。曲芸におけるピエロの悲哀を鮮烈に表した、これもまた新たなアプローチで聴かせている名曲。
8.銀河街の悪夢
シングル「スノーマジックファンタジー」カップリング収録曲。デビューミニアルバム『EARTH』の頃には既に完成されていた楽曲だそうで、その分今回のアルバム収録曲の中で言うと一線を画した位置にあるナンバーのようにも感じます。日常の雑踏を編曲に入れる辺りがそれを象徴しているような印象も。
9.Death Disco
「RPG」と「スノーマジックファンタジー」の間に配信限定でリリースされた楽曲。荘厳なサウンドで繰り広げられる”Question?”が耳に残ります。8.と同様この曲も初期、「世界の終わり」時代を思わせるナンバーとも言えそうです。聴いていて緊張を感じさせる楽曲でもありますね。ここ最近のシングルとは全く違う雰囲気ですが、個人的にはこれが本来のセカオワらしさなのかなという気もしました。
10.broken bone
「RPG」のシークレットトラックとして収録された曲。Fukase本人が骨折したことをきっかけに作られた曲だとか。全体的にコミカルな作りで聴かせています。曲調はこれも初期になりますが「インスタントラジオ」風な感じで。
11.PLAY
『めざましテレビ』木曜日のテーマソング。ロールプレイングゲームを意識したような歌詞が耳に残ります。そういう意味ではここしかないという曲順でもありますね。
12.RPG
クレヨンしんちゃんの映画主題歌として2013年5月にリリースされた楽曲。まだこの当時は”セカオワ現象”なんていう言葉はなかったはずですが、おそらくこの曲によって彼らの方向が完全に定まったのではないかとも感じます。スケール大きく世界観も確かで深く、それでいて何より分かりやすい。彼らの代表曲として何十年先も語られるであろう、素晴らしい名曲だとあらためて感じます。
13.Dragon Night
締めは先行シングル。代表曲を超えて”ドラゲナイ”が流行語にまで昇華しそうな勢いですがきっかけはもちろんこれ。最初に聴いた時はそこまで凄い曲とは思わなかったですが、何度も見聴きすることで知らぬ間に独特のオーラが発生したという印象もこの曲にはあります。感慨深いといいますかこの曲が最後だと一連のセカオワ現象はまだ終わりを迎えることがなさそうな、そんな気分にもさせます。そういう意味ではラストの曲順は本当によく練られているという感も持てますね。
(総評)
リリース前から時代に残る名盤になることはほぼ確定していましたが、実際聴いてみてもそうなるだろうなという感想は変わらず。「RPG」を2年前に初めて聴いた時点で、もうなるべくして名盤になった作品という評が実にしっくりきます。前作『ENTERTAINMENT』からさらにエンタテインメント性を進化させて華やかになったとともに、8.や9.といった”世界の終わり”の頃のシリアスな印象も少し残していて作品に厚味が加わったという感が今作ではありますね。歌詞も深すぎずそれでいてユニーク、かと言って極めて浅いという印象でもありません。そういう意味ではザッと聴きたい人にもじっくり聴きたい人にもお薦めできるアルバムです。この双方のニーズを満たすアルバムもなかなか少ないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
世界の終わり名義の『EARTH』からセカオワの作品はほぼレビュー済みという形になりましたが、最初に彼らの音楽を聴いた時はここまで広く浸透するとは思っていなかったので、正直驚いています。勿論当時から音楽性は話題になっていましたし、個人的にも面白いとは感じていました。”BUMP OF CHICKENやRADWIMPSの後に続く存在としてはこのバンドが第一人者に名乗りを上げた、と言っても過言ではなさそう”と当時のレビューでは書きましたが、まあ続く存在ではなかったですが(歌詞はともかくサウンドが全然違う方向でした)それくらいの大きなポジションには完全に到達しました。その理由をあらためて考えると”今までにない音楽”という要素が一番大きかったんじゃないかと思います。ここまでファンタジー色を押し出したバンドは過去なかったと思いますし、”まだギターを使っているの?”というFukaseの発言は批判も浴びましたがそれもまた音楽を作る上で一つの新しい視点だとも言えます。今後も色々言われるだろうとは思いますが私はセカオワの前例にとらわれない姿勢も出来上がった作品も素晴らしいと感じているので、あらためて次の作品の楽曲・そして魅せ方。おおいに期待したいです。