
葡萄(通常盤) - サザンオールスターズ

葡萄 (完全生産限定盤B) - サザンオールスターズ

葡萄 (完全生産限定盤A) - サザンオールスターズ
![葡萄(生産限定アナログ盤) [Analog] - サザンオールスターズ](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/515z4J7LOBL._SL160_.jpg)
葡萄(生産限定アナログ盤) [Analog] - サザンオールスターズ
(楽曲レビュー)
1.アロエ
「HOTEL PACIFIC」以来15年ぶりとなるWOWOWタイアップ。軽快なリズムの中にもメロディーの良さが光る内容で、演奏では特にピアノが良いアクセントになっていますね。間奏の意味不明なセリフもまた桑田さんらしくて良いです。ノリノリのライブ向きアンセムであるとともに、サビ中心に単純ながら前向きなメッセージも込められている、まさにポップミュージックのお手本のような名曲。
2.青春番外地
”番外地”と言えば昨年亡くなった『網走番外地』などでお馴染みの高倉健が思い浮かびますがその関連は不明。ただその映画シリーズが流行った昭和40年代頃の風景を思い出させるにはピッタリの歌詞と曲調。そういえばブルースのヒット曲も当時は多かったですね。ただ場末の雰囲気を再現しただけでなくどこかコミカルなリズムも入れているのがキャリア40年近い玄人ならでは。桑田さんの昭和歌謡リスペクトも非常によく表れていますね。
3.はっぴいえんど
このタイトルもやはり思い出されるのは亡くなった大滝詠一先生が生前に所属していたバンド。どこか海を思い出されるリゾートミュージックっぽい雰囲気、これもやはり故人のオマージュと言うべきなんでしょうか。
4.Missing Persons
北朝鮮拉致問題を題材にしたダークな楽曲。内容の賛否は別として、こういった政治的な部分を歌にするのが桑田さんらしいといいますか、彼らの世代らしいといいますか。そういえば1980年代中盤と比べて、ここ最近のアラフォー〜アラフィフのミュージシャンはこういう曲を滅多に歌わなくなりましたね。
5.ピースとハイライト
2013年、サザン復活の狼煙となったシングル曲。政治とかそういうこと云々抜きにしてあくまで平和を歌うこの曲はあらためて考えても十二分に立派な楽曲だと思うのですが、いかがでしょうか。
6.イヤな事だらけの世の中で
TBS系ドラマ『流星ワゴン』主題歌。和の雰囲気を前面に押し出した聴かせる楽曲で、やはりメロディーが素晴らしいです。
7.天井棧敷の怪人
独特の声色で聴かせるミュージカル風の楽曲。なかなかのやりたい放題っぷり、これもサザンのアルバムならではの味でしょうか。
8.彼氏になりたくて
ゆったりと聴かせるバラード。メロディーといいコーラスワークといい、安定のバラッドソングと言うべきでしょうか。
9.東京VICTORY
昨年発売のシングル曲。イントロを筆頭にアンセムっぷりが頂点にまで達している、今のサザンのテーマソングとも言うべきナンバー。
10.ワイングラスに消えた恋
サザンのアルバムに必ず一つは欠かせない原坊ボーカル。どこか懐かしい大人な香りは35年前の「私はピアノ」のような雰囲気。なにげにこれだけ長い間声質がほぼ変わらない彼女もまた素晴らしいボーカリストと言えるでしょうか。
11.栄光の男
シングル「ピースとハイライト」カップリング曲。モデルになっているのはサザンの世代にとっての、少年時代からのスーパースター・長嶋茂雄。彼と自分を投影しているかのような歌詞はやはり年を重ねたからこその説得力。
12.平和の鐘が鳴る
平和をテーマにした曲をサザンが歌うのは決して最近のことではなく、1997年の時点で既に「平和の硫歌」という素晴らしい楽曲が発表されています。この曲もまた平和を祈る曲。鐘のSEは藤山一郎の名曲「長崎の鐘」を思い出させる部分があります。
13.天国オン・ザ・ビーチ
シングル「東京VICTORY」カップリング曲。AKBの姐ちゃんたちもPVに登場する下ネタ全開ソング。
14.道
ギターをメインに比較的シンプルな演奏で聴かせる内容。キーボードのアレンジも味がありますね。
15.バラ色の人生
メロディーとしては字余り気味のAメロ〜Bメロが特徴的でしょうか。この曲と前曲は歌詞を聴かせること優先の内容だと思います。
16.蛍
ラストは「ピースとハイライト」カップリングにも収録されている、非常に美しいメロディーのバラード。全ての楽曲を聴き終わった後味の良さとして最高のものがありますね。完璧な名曲だと思います。
(総評)
美しいメロディーで聴かせる楽曲から風刺・下ネタを交えた楽曲まで、非常に幅広いラインナップが揃った一枚になりました。10年ぶりのオリジナルアルバムですが2000年代になる「I AM YOUR SINGER」「DIRTY OLD MAN〜さらば夏よ〜」は収録されていないので、今作は2010年代前半のサザンを総まとめという内容にもなっています。全て聴いた後の感想としては、今のサザンオールスターズで表現したい内容がこのアルバムに詰め込まれているのかなというところでしょうか。事前のシングルでもそうでしたが、60代になろうとする年代だからこそ見えてくる世界が歌詞にかなり表れているような気がしました。サザンはまだまだ現役だとアピールする部分もありつつ後進の若者に向けて伝えたいことも入れているような、そんな印象もあります。いずれにしても1970年代以降に培われた日本のポップミュージックの究極形は最終的にこのアルバムに行き着くのではないか、そう思わせるにはピッタリの作品だと思いました。年齢的にもサザンとしての活動は最終コーナーに差しかかろうとしているのが実際のところだと思いますが、だからこその作品をあらためて聴きたいです。これから60代・70代でもJ-POPの最前線で活躍する人は出てくると思いますが、それより前はほとんどいないわけですからね…(小田和正、井上陽水くらいでしょうか)。