2015年05月20日

絢香『レインボーロード』

レインボーロード (CD3枚組+DVD) - 絢香
レインボーロード (CD3枚組+DVD) - 絢香

レインボーロード - 絢香
レインボーロード - 絢香

(楽曲レビュー)
1.number one
 2014年2月発売のシングル、ソチオリンピック・フジテレビ系中継のテーマソングに使用された楽曲。文字通り人差し指を上に向けて、天に突き刺したくなるほど大きな決意に満ちたナンバー。このアルバムの最初にふさわしい内容にしっかりと仕上げています。

2.Have fun!!
 いわゆる前向きソングなんですが、ひたすら元気にというテイストよりも聴かせることを重視している印象があります。ちょっとR&Bっぽい要素も入れているような。

3.ありがとうの輪
 ”ありがとう”の気持ちを歌に込めた内容。配信開始は2013年10月なので結構前ですね。既に色々な歌手が採用しているありふれたテーマなんですが、その中で目立つのはゆったりとしたテンポと丁寧さでしょうか。編曲・歌唱含めて、聴いていて頭の中に夕焼けの風景が思い浮かぶ楽曲になっています。

4.No end
 2分48秒の演奏時間は絢香の中では屈指の短さでしょうか。歌い出しからして英語ですが、歌詞に混ざる英語の割合が非常に高いです。作曲はTom Collekiyoという外国の方、これまで西尾芳彦、松浦晃久といった方と共作名義はありましたが完全に外部というのはこれが初。少しゴスペルっぽいの要素も入っていて、彼女の楽曲の中では完全に新境地を見せている内容になっています。今回のアルバムはタイアップ曲がほとんどの中でこれは唯一のノンタイアップ、ですがPVは制作されています。そこに今アルバム中制作におけるこだわりが見えているような気もしますが、いかがでしょうか。

5.ツヨク想う
 『NEWS ZERO』テーマソングとして使われた、3年前のライブDVD付属CDに収録されていた楽曲。強いメッセージ性と美しいメロディーに彩られた、文句なしの名曲ですね。

6.beautiful
 ドラマ『シェアハウスの恋人』主題歌として使われた、2013年2月発売のシングル。この曲もタイトルに全く反することのない、素晴らしい美しさに満ちた屈指のバラード。

7.幻想曲
 シングル「にじいろ」カップリング収録曲。「ツヨク想う」「beautiful」と続けて聴くとよりこの曲の輝きが増すという印象ですね。これもタイトル通りクラシックっぽさをふんだんに出したバラードソング。特にストリングスがこの曲では非常に良い味を出しています。バラードにストリングスが必要以上に入る編曲がここ最近目立つ中で、この曲は最もうまい使い方をしている一例と言えるのではないでしょうか。

8.Lose control
 4.と同様この曲もTom Collekiyo氏の作曲。映画『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』イメージソング、この曲も半分以上が英語詞。小気味良いリズムの中にどことなく感じさせる重々しさ、深味を感じさせる作品。

9.Through the ages
 夫が主演した映画『黒執事』主題歌のセルフカバー。提供した歌手は全英でも人気を誇るGabrielle Aplin。「number one」のカップリングにも収録されていましたが、他の曲と同様アルバムで聴くと余計に良さが際立っている印象です。むしろ中盤から続く流れの集大成としてこの曲が配置されているような感もあります。メロディーの切なさとスケールの大きさが特に際立っていますね。編曲が塩谷哲なので素晴らしい内容になるのは必然ですが、それにしてもという感じです。

10.ずっとたいせつなキモチ
 マイナビウエディングCMソングというわけで歌詞のテーマもすなわち「結婚」。でも6月に第一子を妊娠した絢香にとって、新しい出会いは理想の異性よりむしろこれから産まれてくる命なのかもしれません。そう考えると余計にスケールの大きさを聴く方に勝手に与えてくれる一曲とも言えそうです。ありふれた言葉の集積が素晴らしい歌詞になるというのはこれまでにも多くありますが、これもまたその一例。

11.ちいさな足跡
 「beautiful」と両A面で収録されているシングル曲。これも前曲と続けて聴くことでより説得力が増します。

12.バースデーソング
 この曲は本当に妊娠後に作られた楽曲なんだそうです。シンプルなテイストで作られた文字通りのバースデーソング。後半で子どもたちのコーラスが入る部分はより温かさを聴く方に与えてくれますね。

13.にじいろ
 ラストは『花子とアン』で朝のお茶の間に温かさを与えてくれた名曲。今回の収録曲の中でこれが際立って知名度高いので、なんだかラストというよりもアンコールという印象の方が若干強いです。


(総評)
 デビュー10年目、今回のアルバムは4枚目。これまでの3枚は例外なく名盤なわけですが今作もまた文句なしの名盤です。それも過去の3作とは違うテイストですね。

 Tom Collekiyoはオフィシャルサイトによると絢香の友人だそうですが、この人の楽曲でアルバムに相当大きな幅が広がった気がします。4.と8.双方ともこれまでの絢香になかったタイプの楽曲で、更に言うとノンタイアップの4.を押し出す形にしたという所がまず素晴らしいですね。新鮮さという面でまずここで大きな加点になります。

 基本的には「結婚」「感謝」「誕生日」などありふれたテーマの曲が多かった印象もあり、中盤はほぼバラードだったのですがその割に聴いていて退屈さは全く感じなかったです。シングル曲など既発曲が多い上にタイアップ中心で聴きやすく仕上げてたという側面もありますが、一曲一曲がものすごく丁寧に作られていた印象でした。特に素晴らしいと思ったのはストリングスの使い方ですね。どの曲もかなり効果的に使われていて、必然性を感じさせるものばかりでした。こういったバラード中心の中盤ではJ-POPというよりも歌声がのせられたクラシックに近い印象もあって、かなりの上品さを感じさせました。また一曲一曲の繋がりもかなり自然で、曲順も相当うまく作られている感があります。

 したがって今回の絢香の作品はかなり大人向けのアルバムと言えます。デビューしてもうすぐ10年、間もなく第一子が産まれようとする中での発表なのでこういう作品になるのも必然といった印象がありますね。何と言いますか、ここまで成熟した良さを感じさせるアルバムは過去あまりなかったような気がします。デビュー以降リアルタイムで聴き続けているからそう思うだけなのかもしれないですが。それにしてもこのアルバムでの歌声、そこにのせられた歌詞を聴くたびに良い伴侶に巡り合えたものだと感じるのは私だけではないはず。新婚した時期は色々言われたこともありますが、何と言いますか良い意味で芸能人らしくないカップルだなとあらためて感じますね…。









posted by Kersee at 22:42| Comment(0) | アルバムレビュー(女性J-POP) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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