
八奏絵巻(CD+DVD)(初回生産限定盤 type-A MUSIC CLIP集) - 和楽器バンド

八奏絵巻(CD+DVD)(初回生産限定盤type-B LIVE収録) - 和楽器バンド

八奏絵巻(初回生産限定盤 type-C) - 和楽器バンド
(楽曲レビュー)
1.戦-ikusa-
今年2月に映像シングルとしてリリースされた作品。アニメ『戦国無双』オープニングテーマ。勇ましさを全面的に出した非常にロック色の強いナンバー。畳み掛けるように奏でられる各楽器の音がバンド・和楽器ともに炸裂してますが、個人的には鈴華ゆう子の声の揺らぎを最大のポイントとして挙げたいですね。完成度は極めて高いです。
2.星月夜
和音階で作られるやや早口なサビのメロディーが大変美しいナンバー。三味線の細かい指さばきに間奏の大太鼓に気合いの声、まさにこのバンドの個性が凝縮されているという感想が自然に生まれますね。
3.Perfect Blue
おそらく今のところ和楽器バンド唯一の英題オリジナル曲。一応デュエット曲で、男性のラップと早口パートを担当しているのはギターの町屋さん。かなりの滑舌の良さです。そういう意味では若干『ボカロ三昧』の色を残している楽曲とも言えるかもしれません。
4.追憶
和楽器というバックの演奏がなければ割とノーマルなスタンダードナンバー。ただこういう曲だからこそ鈴華ゆう子の歌の上手さ、和楽器メインのアレンジが余計に映えます。
5.鋼-HAGANE-
曲中に入るデスボイスやより力強いエレキギターの演奏はメタルの要素あり。これに三味線や箏の音が加わるというのもなんだか色々な意味で趣深いです。Aメロの鈴華ゆう子の低音ボイスも必聴。徐々に盛り上がっていく展開、そしてラストのロングトーンも圧巻。
6.風鈴の唄うたい
思わず”侘び寂び”という言葉を使いたくなる珠玉のバラード。美声に酔いしれることが出来るナンバーです。
7.華火
昨年8月に1st映像シングルとして発売された作品。和楽器バンドにとって初のオリジナル作品になります。花の美しさと花火の儚さを両立させている、そんな雰囲気が非常に良いですね。
8.郷愁の空
町屋さんのボーカルで聴かせるバラード。このアルバムの中でも特に異質な存在の楽曲です。割とエイベックス・ロックサウンドという趣でAcid Black Cherryにも近いような。
9.暁ノ糸
歌い出しが詩吟で構成されているJ-POPはおそらく史上初ではないでしょうか。三・三・七で構成されるサビのリズムはもはや和歌にメロディーを乗せた作品と称したくなるクオリティ。凄いを通り越してもはやエグいと言いたくなる作品ですね。
10.白斑
5.ほどのメタル色はないですが、この曲もかなり激しめのロック色強いナンバー。サビラストの叫ぶような歌唱がすごくカッコ良いです。
11.なでしこ桜
桜と撫子という日本的モチーフの象徴を歌にした、日本的メロディーのロックバラード。全体的に美しいメロディーが多いこのアルバムの中でも特にそれが優れている印象があります。
12.反撃の刃
dTVオリジナル『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 反撃の狼煙』主題歌。スピード感溢れる構成とラストの転調2回に大いなる聴き応えを感じる名曲。
13.千本桜
この曲がニコ動にアップされた2011年9月17日以来、気がつけば数多くの歌手がカバーしていますがやっぱり和楽器バンドVer.が最も至高の存在と言えるでしょうか。あらためて聴いても、歌唱だけでなくアレンジも相当に神がかってます。
14.華振舞
このアルバムの集大成と言わんばかりに荒ぶっている楽曲ですね。特にドラムの刻み方は極めて速いです。間奏のベースソロも凄く、どちらかと言うとバンド音の方が目立つ気もしますが和楽器の音があるからこそここまでの凄味が出ているのだと思います。メロディー・歌唱に関してはもはや語るまでもないでしょう。全てにおいてものすごくレベルの高い楽曲で、これをライブでは完全生演奏でやるわけですから驚愕の一言につきます。
15.地球最後の告白を
ボーナストラックはボカロ曲のカバー。個人的には7年前に榎本くるみが歌った「冒険彗星」に似た雰囲気を感じましたが、いかがでしょうか。
(総評)
今年は上半期と比べて下半期のラインナップがどうも弱い印象があるのですが、その中において今作はまさにピカイチの存在感。実際オリコンでも週間1位を獲得しましたが、作品の内容も今年の下半期では現時点でトップクラスと言って問題ないと思います。
とにかく全曲通して共通しているのは演奏の凄さとボーカル・鈴華ゆう子の歌の上手さ。特に歌唱力については一度生で聴いたこと分余計に感じることですが、ものすごいです。おそらく今のJ-POPの女性歌手では5本の指に入るでしょう。低音・高音ともに聴く方をハッとさせる声、難解なメロディーを全く苦にしない音程、間違いのない発声に裏打ちされた声質および声量、そして伸ばしにおける絶妙なビブラート。極端な話、どんな曲でも彼女に歌わせると魅力的な楽曲に変身すると言いたくなるほどですがそこは当然「和楽器」「バンド」。このアルバムは演奏も非常に聴きどころになるわけですね。歌パートはやはり自然にボーカルがメインになるわけですが間奏パートはまさにそれぞれの楽器が目立つ部分で、どのパートにも最低1曲は見せ場が必ず存在していますね。そういう意味では1曲の中で退屈な箇所が全く存在しない、大変密度の高いナンバーが並べられているアルバムと言えます。
前作は『ボカロ三昧』で1stアルバムながらカバーアルバムという要素もありましたが今回は9割がオリジナルの楽曲。真価が問われる内容とも言えるアルバムですが結果としては見事なものでした。どの曲にもこのバンドらしさを保ちつつ個性もしっかり出していて、並べて聴いていても実に面白い内容だったように思います。言うまでもなく2015年を代表する名盤ですね。楽曲のバリエーションも豊富なのでしばらくは名曲が量産されることでしょう。次作も非常に楽しみです。