
風の果てまで (初回限定盤A) - 斉藤和義

風の果てまで (初回限定盤B) - 斉藤和義

風の果てまで (通常盤) - 斉藤和義
(楽曲レビュー)
1.あこがれ
ドラムの音から入って直後にかき鳴らされるギターの音、そこには絶大なるロックンロール性と安定感。声を聴かずとも彼らしいと分かる入りから既に素晴らしいです。歌詞はそのままの君こそが憧れという内容、これも男性なら共感を憶えやすいものに仕上がっているのではないでしょうか。
2.さよならキャデラック
典型的とも言える攻撃的なロックナンバー。内容とは裏腹にこれまた絶大な安心感。
3.傷口
9月発売のシングル曲。彼女の傷口からインスピレーションされる歌詞が素敵だと感じさせる内容。
4.攻めていこーぜ!
同じく9月発売のシングル曲。タイトルだけを見ると激しそうな楽曲を想像しますが、実際は聴く人の肩を押してくれるようなやや穏やかな曲調。
5.アバリヤーリヤ
インドか中東か、異国情緒が漂うギター演奏が耳に残る浮遊感のあるナンバー。
6.夢の果てまで
アルバムタイトルを意識したナンバーで、この曲の歌詞にも”風”という単語が登場します。今回のアルバムで本人が一番言いたいことはこの曲に凝縮されているのかなという印象ですね。齢50近くまで人生を重ねないと書けない歌詞なのかなと感じます。
7.小さなお願い
フォークソングに近いやや悲しげな曲調の小曲。間奏のピアノが良いアクセントになっています。
8.恋
大人の恋といいますか、それを追憶した歌詞といいますか。6分に渡る彼なりの恋の歌。
9.シンデレラ
シンデレラの話をモチーフにした、これも彼なりのラブソング。
10.時が経てば
このアルバムの核とも言える6分半にわたる長尺曲。ビルの屋上から自殺を試みようとする男についての一部始終を、斉藤和義ならではの視点で描いた内容。緊迫した状況の中で”時が経てば忘れられることだってあるってのに”と歌う歌詞が何よりも心に響きます。彼の凄さがまたあらためて伝わる、新しい名曲。
11.Player
自分を"Player"に見立てて人生を切々と語る楽曲。
12.Endless
昨年12月に配信限定シングルとしてリリースされた作品。ミュージシャンとしての生きざまがそのまま歌になった楽曲という気がします。
(総評)
全体としては大人向け、49歳の斉藤和義が同年代に向けたアルバムという印象でした。さすがに若い頃みたいな激しさはあまりないですが、その分彼の自然さと洞察力がよく表れている作品だと思います。何を考えているか分からない静かな狂気性というのが彼に対する評価になるかと感じますが、そうなるとこの作品はとても穏やか。ですがその奥に秘められているのは…という気にも少しなるかもしれません。楽曲や演奏は昔からの流れを継続していて新鮮味はあまりありません。したがって刺激が欲しい若い人にはちょっとお薦めできないですが、アラフォーやアラフィフの方々や昔から応援している人にとっては間違いなく今作も心に響く作品になるでしょう。ロキノンでもロックでもない”ロックンロール”を聴きたい人にはお薦めで、是非手にとって頂ければと思います。