
4YU(初回生産限定盤) - さかいゆう

4YU - さかいゆう
(楽曲レビュー)
1.SO RUN
PVも作られているリードナンバー。飛び跳ねたくなるような、あるいはタップをしたくなるリズムで奏でられるピアノの音はポップミュージックの神髄を伝えているかのよう。間奏で繰り広げられる各楽器の競演は上品かつダイナミック、芸術性の高さもあって大変聴き応えがあります。こういう曲を作ることが出来るのは、ものすごくカッコ良いですよね。そんなことを強く感じさせる今年を代表する名曲。
2.Doki Doki
”レイディー メイビー”と韻を踏むサビに代表される心地よさが曲全体を支配しているようなナンバー。気持ちの昂ぶりを落ち着いたテイストで、でも胸の内はタイトル通りドキドキ。編曲・表現の巧さを感じさせる逸品です。
3.WALK ON AIR
思わず手拍子したくなる盛り上げ曲、随所に織り込まれるダイナミックなピアノ演奏がものすごく光ってます。リズムとBPMを変えた間奏は別の曲が挿入されているかのよう、ここはこのアルバム最大の聴きどころと言って良いかもしれません。
4.下剋情緒
ジャズのテイストが入る演奏は今すぐにでもコーヒーのCMに起用して欲しい勢いですね。サビの歌唱は彼なりの色気も感じさせます。ものすごく良い雰囲気がここには溢れています。都会の喫茶店のBGMにもよく合うのではないでしょうか。
5.あるギタリストの恋
ゆったりとしたメロディーが心を落ち着かせてくれる楽曲。「蘇州夜曲」辺りに代表される、戦中前後の流行歌のエッセンスも入っているような、あるいはこれより後にヒットした南佳孝の「スローなブギにしてくれ」のような。いずれにしてもここ最近ではあまり耳にしないタイプの楽曲のように感じました。
6.愛は急がず -Oh Girl-
NONA REEVESの西寺郷太が作詞提供、編曲はAvec Avec。キーボードの音色の使い方に類稀なセンスを感じさせる一曲です。
7.サマーアゲイン
サビのフレーズのリフレインが耳に残る楽曲。徐々に盛り上がっていくような構成もインパクトあります。
8.SELFISH JUSTICE
"セルフィッシュ セルフィッシュ"と繰り返されるサビが印象深い楽曲。歌詞は個人的に大変共感できる内容です。間奏の管楽器の音も聴きどころ。
9.トウキョーSOUL
都会の夜をイメージさせるサウンドが胸に響く楽曲。センスの良さがよく出ています。
10.愛は微熱
星空が似合う愛のセレナーデ。思わず聴く人をウットリさせてくれるような、ラブバラードの傑作。
11.ジャスミン
昨年10月リリースの先行シングル曲。このアルバムの締めに相応しい王道バラード。
2-1.つつみ込むように…
おなじみMISIAのデビュー曲のカバー。さすがにオリジナルほどの凄味は感じないですが、R&Bの色を濃くして彼なりのオリジナリティーをしっかり作り上げています。
2-2.今夜はブギー・バック (NICE VOCAL)
NICE VOCALバージョンなので小沢健二のカバーですね。ラップはなしでメロディアスに。
2-3.ACROSS THE UNIVERSE
The Beatlesの活動後期の名曲のカバー。ピアノのみのシンプルな演奏で歌い上げています。
2-4.One more time, One more chance
オフィスオーガスタの大先輩・山崎まさよしの名曲のカバー。こちらもピアノの弾き語り。
2-5.遠く遠く
槇原敬之の名曲のカバー。ピアノメインのシンプルな演奏に加えられるアコーディオンが素晴らしいですね。
2-6.The Stranger
Billy Joelの名曲のカバー。もうイントロのピアノと口笛なんか、どうして今までカバーしていなかったのかというレベルですね。選曲からして反則、聴かずとも名カバーだと推測できる内容。勿論中身も大変素晴らしいです。
2-7.接吻
ORIGINAL LOVEの名曲のカバー。この曲も雰囲気タップリ。
2-8.よさこい鳴子踊り
まさかの高知県民謡カバー。これは凄いです。民謡がここまでオシャレポップスになるのかという驚きとともに、民謡らしいエッセンスもしっかり残しているのがとんでもないですね。
2-9.What's Going On [Live]
Marvin Gayeが1971年に発表した名曲のカバー、ライブバージョン。イントロの長いセッションがライブならでは。
2-10.PAPER DOLL [Live]
山下達郎の名曲のカバー、こちらもライブバージョン。選曲は勿論のこと、演奏にもセンスの良さを感じさせる内容です。
(総評)
贅沢な名盤、というのが実にしっくりくる内容でした。初回限定盤はカバーアルバムも加わった2枚組でこちらもレビューしましたが、オリジナルもカバーも大変素晴らしいです。
今年のカギを握るジャンルは、1つが以前から何度も書いている男性ソロJ-POP。もう1つが星野源、cero、Suchmos辺りから由来するハイセンスなシティポップミュージック。この両方を満たしているのがCDショップ大賞を受賞した星野源と、このさかいゆうではないかと強く感じさせる作品でした。デビュー当時に聴いた彼の作品はクラシックの影響を受けたポップスという趣で新鮮さを感じました。その時代の一歩先を行く、という印象もありました。このアルバムのさかいゆうは時代に追いついたといいますか、時代が彼に近づいてきたというべきでしょうか。美しい歌声で、ピアノの演奏を基調として各ジャンルの良い部分を積極的に取り入れているサウンドはまさしく2010年代後半のトレンドをいっている作品と言えます。そんな音楽を作れるのは本当にセンスのあるアーティストだけだと思います。彼はまさしく、そういうアーティストの一人に数えられますね。
3月後半はNegiccoに新曲シングル提供、既にYoutubeで公開されていますがそちらもまた素晴らしい名曲でした。オフィスオーガスタはここ数年秦基博がブレイクして、山崎まさよしも映画ドラえもん主題歌を歌うことになって勢いづいていますが、今年はいよいよこの人がスターダムになる予感がしています。2016年は2月・3月・4月と注目作品が目白押しですがまずはこの作品、是非皆さんにもお薦めしたいです。