
最高の仕打ち(完全数量限定生産盤)(DVD付) - 片平里菜

最高の仕打ち(通常盤) - 片平里菜
(楽曲レビュー)
1.この空を上手に飛ぶには
1分47秒の短い曲。ピアノとギターのみの演奏で歌うアコースティック仕様。いわばプロローグみたいなものですね。
2.誰もが
昨年2月リリースの両A面シングル曲。SCHOOL OF LOCKとロッテToppoによる受験生応援プロジェクトの公式応援ソング。一つ一つの言葉に気持ちを込めて熱唱する大作バラード。
3.Party
細かいエレキギターのリズムがテンションを上げてくれるロック色強いナンバー。YUIの「Rolling Star」を彷彿とさせると言いますか、ものすごく影響されていると言いますか。これは演奏より彼女の歌唱に由来する部分が大きいです。なお編曲はSCANDAL。なるほど確かにすごく納得。というか彼女たちが外部にこういった形で提供するのは初めてなのではないでしょうか。
4.誰にだってシンデレラストーリー
昨年8月リリースのシングル曲。いわゆる爽やかな、若い女性が非常に好んで歌うタイプの明るいポップナンバー。憶えやすくて大変良い曲であることは間違いないですが。
5.Love Takes Time
6/8のリズムが心地良く響くバラード。綺麗な水質で流れる川のようなピアノの編曲が良いですね。メロディーラインの微妙な難しさは、これまたかなりaikoの影響があるような印象ですが。なお編曲はクラムボンのmito。
6.あの頃、わたしたちは
字余り気味にメロディーに入れられる歌詞は1970年代フォークソングのような。都会の高架下で奏でられるストリートミュージシャンの絵が思い浮かぶ、ギターの弾き語り。シンプルです。それを表しているかのような雑踏の効果音もグッド。
7.舟漕ぐ人
この曲もややアコースティックな雰囲気のあるバラード。それだけに彼女の歌の上手さが余計に胸に響きます。
8.スターター
エレクトーンの音が耳をひくアップテンポナンバー。スピード感のあるテンポは、ライブでの盛り上がりを意識した内容のように聴こえます。J SPORTSのプロ野球中継タイアップ、確かに納得。
9.大人になれなくて
聴く人に共感してもらうことを目的とした等身大ポップス。20代前半だからこそ説得力のある歌詞、というところでしょうか。ここ最近注目を浴びているcinema staffが編曲担当。
10.この涙を知らない
今年1月リリースの先行シングル。島田昌典編曲ということで、まさに往年のaikoらしいと思わせるバラード。
11.BAD GIRL
60's〜70'sの洋楽を思わせる味のある編曲はなんと亀田誠治。ここ最近の亀田さんの中では出色の出来ではないでしょうか。片平里菜にとっても新境地と言える内容で、個人的にはこのアルバムで最もお薦めしたいナンバー。
12.煙たい
昨年2月リリースの両A面シングル収録曲。煙草を吸う彼への想いを表現しているラブソング。最近は男性でも煙草を吸う人は減ってきましたが、歌にするとやっぱり絵になる男性の仕草の一つなのかなという印象になりますね。
13.最高の仕打ち
6分近い楽曲ですが、ギターを弾いているのはなんとHAWAIIAN6の安野勇太。アコースティックギターのみの演奏で一発録り。彼が提供する楽曲でこれだけシンプルな編曲は他にないと思います。彼女の歌声はシンプルな編曲になればなるほど映えますが、この曲はまさに典型。アルバムタイトルナンバーですが、つまるところこのアルバムはこの曲があるからこそ全ての価値が生まれる、という感じにも聴こえました。途中アカペラになるシーンは圧巻の一言。歌手・片平里菜の今のところの完成形を示していると言える珠玉の一曲。
14.そんなふうに愛することができる?
ラストは浮遊感のある編曲で聴かせるバラード。もやがかかったようなサウンドはあまり終曲感なく、このまま次のアルバムの1曲目にワープしそうな勢いがあります。全国ツアーのタイトルにもなっています。
(総評)
楽曲は全て自らの作詞作曲ですが、各所からゲストという形で編曲に携わってもらうという作品でした。これは前作『amazing sky』とも共通しています。バリエーションは豊かに聴こえますが、良くも悪くも優等生的な作品という感想、というのも同様でしょうか。ただそれは10.までで、後半の11.〜14.はまた違う感想になります。この4曲は最も片平里菜らしさを出していた部分であるとともに、そこに至るまでの”優等生的な”という感想を”器用な”と書き換えることも出来る内容でした。タイトルナンバーである13.をアルバムのタイトル、14.をツアータイトルにする辺り、おそらく作る側としても一番聴いて欲しい楽曲はラスト2曲なのではないかということも強く感じました。シングルでは正直に申し上げると若干の物足りなさがありましたが、アルバムにするとなるほどこういうことなのかと納得。そして個人的には、次のアルバムは後半の作風で一枚通してみるともっと面白くなるんじゃないかという気がしてます。結局のところ前半の感想は”aikoっぽい””YUIっぽい””阿部真央っぽい”という具合に諸先輩方の名前が思い浮かぶ内容なので…。その点後半は”片平里菜っぽい”と何年後かに別の女性アーティストが出てきた時に流用できる仕上がりなので、今後は是非それを貫いて頂ければと感じています。勿論各曲の作風ごとにそれぞれ違う色を出せるのも彼女の長所であることは間違いないので、そこを更に追求するという選択肢もありますけどね。この辺は彼女自身は勿論、プロデューサーなどスタッフの力量が問われる部分。全てをひっくるめて、次の作品がどうなるかにもあらためて期待したいところです。