2016年03月27日

SHISHAMO『SHISHAMO 3』

SHISHAMO 3 - SHISHAMO
SHISHAMO 3 - SHISHAMO

(楽曲レビュー)
1.ごめんね、恋心
 イントロなしから早々に分かる失恋をテーマにしたナンバー。”人里離れて”というフレーズが今までにない単語のチョイスで、早速異彩を放ちます。速いBPMで響き渡る各パートの音が、感情の激しさを表していますね。いきなりですが、今年を代表する失恋ソングだと思います。

2.中庭の少女たち
 イントロの音の運びから凄まじいです。狙って作った不協和音の連発。この音のチョイスを楽曲として表現できるバンドは過去から現在を見渡しても相当少ないのではないでしょうか。”中庭”の意味を表現しているような歌詞も大変に秀逸。間違いなく今年の楽曲を振り返る上でもかなりの上位に入る曲になるでしょう。

3.生きるガール
 昨年のシングル「熱帯夜」のカップリングに収録されている楽曲。4つ打ちビートを基調としたノリの良いサウンド、一般的に考えればストレートですがSHISHAMOとしては案外意外な楽曲とも言えるかもしれません。等身大の歌詞はかわいいの一言、それに尽きます。

4.笑顔のとなり
 ややマイナーな感じの曲調で聴かせる楽曲。あまり派手さはないですが、一つ一つの演奏は一聴すると細かく高い技術が要求されそうな印象で、それも含めて玄人好みなナンバーと言えそうです。

5.手のひらの宇宙
 深夜にひたすらスマートフォンをしている場面をそのまま歌詞にしたような楽曲。だから”手のひらの宇宙”。流石です。

6.推定移動距離
 カントリーとフォークを混ぜ合わせたような雰囲気はビバ70年代といったところでしょうか。ただこれを遠距離恋愛の楽曲にするのはSHISHAMOらしい味だとも言えそうです。

7.女ごころ
 シングル「君とゲレンデ」カップリング収録曲。このアルバム前半は失恋を歌った楽曲がメインでしたが、こちらは目出度く両想いを果たしたことを歌った内容。ベースラインが非常に良い味出してます。

8.熱帯夜
 昨年8月リリースのシングル表題曲。ただでさえ暑い夜を更に蒸し暑くするようなサウンドと、アイスばっかり食べているベース松岡のPVが特徴。

9.旅がえり
 この曲もベースの演奏がキーになっている楽曲ですね。シチュエーションは上京して故郷へ送る手紙、でしょうか。

10.君とゲレンデ
 昨年12月リリースのシングル表題曲。アルバムにおいては、ややダウナーな雰囲気の中盤から一気に開放感を与える役割を担っている楽曲になります。考えてみると、昨年の今頃までにおける所謂”SHISHAMOっぽい曲”というのは今作この曲くらいかもしれません。

11.みんなのうた
 サウンドは管楽器の音を入れる部分に何よりも新しさを感じます。辛いことがあっても前向きに頑張るという歌詞には勇気づけられる人もきっと多いはずです。これもまたこのアルバムだけでなく、SHISHAMO自体にとっても今後大変重要な位置を占める人気曲になることは間違いなさそうです。
 PVはここ最近注目度が上がっている女優の清水富美加が出演。美容院をモチーフにした作品はストーリー性もありますが、それ以上に突っ込みどころ満載。シャンプーで顔に乗せるたびに歌の息でハンカチが飛ぶシーンはなかなか爆笑モノです。


(総評)
 さすがに前作『SHISHAMO 2』ほどの衝撃はなかったと思いますが、やはり今作も間違いなく名盤に仕上がっています。失恋ソング中心から、曲が進むにつれて少しずつ傾向が変わっていく歌詞もよく作り込まれていますし、楽曲の雰囲気も狙いがハッキリしています。あえて中盤少しおとなしめのサウンドで固めたのは、今作を作るにあたって大きなポイントになっていると言えそうです。それだけに一聴すると最初の数曲のインパクトが凄まじい分、少し中盤が弱いように聴こえるという人もいるかもしれません。その辺りをどう捉えるかで、評価が変わる作品にもなりそうです。
 SHISHAMOしか絶対に作れないだろうという観点では何と言っても2.でしょうか。個人的にはこの曲が今作の評価を大きく押し上げる形になりました。この1年でツアーがホール単位になり、関西だと6月は大阪城ホールワンマン開催という実績にまでなりましたが、来年の今頃はどこまでいくでしょうか。音・歌詞・見せ方の巧さという点で彼女たちに勝るガールズバンドは現状右に出る者はいないというくらいですが、それだけに更なる凄味を味わわせることはまだまだ出来そうな気がします。いずれこのバンドはフェスの一番大きいステージでトリを取るような存在になるはずです。まだまだ彼女たちにとってこのアルバムは通過点、次作以降もおおいに期待していきたいです。






posted by Kersee at 02:08| Comment(0) | アルバムレビュー(J-ROCK) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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