2016年04月20日

Perfume『COSMIC EXPLORER』

COSMIC EXPLORER(初回限定盤A)(2CD+Blu-ray) - Perfume
COSMIC EXPLORER(初回限定盤A)(2CD+Blu-ray) - Perfume

COSMIC EXPLORER(初回限定盤B)(2CD+DVD) - Perfume
COSMIC EXPLORER(初回限定盤B)(2CD+DVD) - Perfume

COSMIC EXPLORER - Perfume
COSMIC EXPLORER - Perfume

(総評)
1.Navigate
 聴く人の心を高めさせてくれるオープニング・インストゥルメンタル。最初の音の時点で、中田ヤスタカをはじめとする制作チームの、このアルバムに込める力の入り具合が伝わってきます。

2.Cosmic Explorer
 四つ打ちのリズムを基調として作られたメロディーと音のシャワーは、一言で言うと”力強さ”。楽曲の壮大さは世界を超えて宇宙、あるいはそれよりも広い空間がイメージできるでしょうか。それとともに大地の響き・鼓動、地球の胎動までもが伝わってきます。タイトルナンバーであるこの曲は文字通り今作の核であり、現在のPerfumeの凄さを伝える名刺になっています。いきなりになりますが、名曲という言葉自体がこの曲の前ではすごく小さな単語になります。別次元。そう言い切りたくなるほどの雰囲気を持ったトラックと言って差し支えないナンバーではないでしょうか。

3.Miracle Worker
 浮遊感全開のコーラスに、”起こせミラクル”という歌詞。それはPerfumeが過ごした15年超の経験から培われたメッセージにも聴こえます。宇宙遊泳をイメージしているようにも聴こえる雰囲気は、それだけ大きな荒波に揉まれてここまで過ごしてきたことを伝えているよう。

4.Next Stage with YOU
 メルセデス・ベンツ『Aクラス』CMタイアップ曲。CMで使われているサビは快調な車の走りと快適なアメニティを想起させる内容で見事なもの。歌詞にある文字数はわずか4行分で、その内容も単純。だからこそ歌パートの間にある長い間奏が、より大きな意味を持ったものに仕上がっているようにも思えます。

5.STORY
 アメリカ公演でも大きな話題になった、スクリーンを使ったデジタル演出で使用された楽曲。5分44秒のトラックの中で歌パートに入るのは4分のところからで、これもまた歌詞カードで記される文字は4行。音だけで只者ではないオーラを感じさせる楽曲ですが、ダンスと映像演出が加わるライブだとその比ではありません。過去のPerfumeだと、「GAME」がこの曲に近い位置づけになるでしょうか。8年前のアルバム『GAME』は彼女たちにとって2ndにあたる作品ですが、このアルバムはユニバーサル移籍後・世界を意識してからの2枚目オリジナル作品。そう考えると共通点が多いといいますか、おそらく制作側もそれを意識しているような。そんなことも感じます。

6.FLASH (Album-mix)
 現在映画『ちはやふる』主題歌として大ヒット中の楽曲ですが、先行配信されていた楽曲とはアレンジが全く違います。電子ピアノに近い音色が非常に強いですね。メロディーの美しさを味わうには配信バージョンの方が良いと思いますが、音のシャワーを感じるにはこちらがお薦めでしょうか。初回限定盤についているCDには配信でリリースされたオリジナルも収録されています。

7.Sweet Refrain (Album-mix)
 今回のアルバムは『LEVEL 3』以来2年半ぶりの作品になりますが、この曲は前作の直後・2013年11月にリリースされたシングル表題曲。これまた当時とは違うアレンジ。全体的に音が濃く厚くなっていますね。リアレンジというよりパワーアップと言った方が適当かもしれません。

8.Baby Face
 バックで流れる音を比較的少なめにして、3人のボーカルを前面に引き立たせたような楽曲。年相応の大人っぽさを感じさせる歌詞も聴きどころ。

9.TOKIMEKI LIGHTS (Album-mix)
 シングル「STAR TRAIN」カップリング曲のリアレンジ。聴くたびに最初の結婚の少し前の松田聖子のヒット曲を思い出してしまいます。メロディーの良さがあらためて抜群な内容。

10.STAR TRAIN (Album-mix)
 昨年10月のシングル表題曲のリアレンジ。シングルと比べて音に立体感が生まれている感じでしょうか。

11.Relax In The City
 昨年4月のシングルA面曲の1曲目。この曲と次の曲はシングルと同じアレンジ。

12.Pick Me Up
 同じく、昨年4月のシングルA面曲の2曲目。

13.Cling Cling (Album-mix)
 一昨年7月リリースの表題曲。最初のサビ直後で思いっきりリアレンジされた間奏のスピード感たるや。

14.Hold Your Hand
 シングル「Cling Cling」のカップリング曲。詰まるところこの曲の歌詞にあるように、人と人との繋がりの結晶が今日のPerfumeを作り上げたとしみじみ感じさせる楽曲。今回のアルバムの締めにもまさにピッタリ合っています。ミュージックビデオを見てもらえればよりそれが伝わるのではないでしょうか。


(総評)
 一言で言うと”強い”アルバム。今作はこれに尽きると思います。ここまでの強さを感じさせたアルバムは、Perfumeのこれまでの作品はおろかそれ以外のアーティストのアルバムでもなかった感覚。つまり言うと、名盤は名盤でもそれ以上に強く記憶に残る歴史的作品。宇宙規模、となるとさすがに言い過ぎかもしれませんが、それくらいの言葉を感想として使いたくなるアルバムになります。もちろん今年トップクラスのアルバムで、2010年代あるいは21世紀単位で語りたくなる作品ですね。これは8年前『GAME』を初めて聴いた時の感想に近いです。経験値と音の精度が上がっている分、作品のクオリティとしてはこれ以上のものになるでしょうか。

 特設サイトで中田ヤスタカが述べた話によると、今作の制作にあたって”音楽のために音楽を作る””Perfumeの音楽を取り戻す”というコンセプトがあったようです。初期のアルバムは半ば自分の作品を作るつもりで、という意気込みもあってその感覚を今回のアルバム制作で呼び戻すという意図もあったのだとか。というわけで今作、先ほど書いたことと重複しますが個人的には”第2の『GAME』”あるいは”『GAME』のアップデート”、そういう結論になります。ユニバーサル単位で考えると、オリジナルは今作で2枚目、ベストを含めると3枚目。そう考えるとしっくり来るのではないかという気がしてます。

 一つ一つのトラックには楽曲単位の良さ以上に底知れぬオーラが加わっています。インスト含めた新曲4つから「STORY」を挟んでシングル中心の流れも言うことなし。そのシングル曲も大胆なリアレンジが加わっています。シングルとして初めて聴いた以上にハッとさせる場面があるのは、オリジナル曲が凄いという以上に凄いことのような気がします。あえて「Relax In The City」「Pick Me Up」をそのままにするのも面白かったですし、最後に「Hold Your Hand」を選ぶのも素晴らしい選択肢。もっともラスト4曲は若干ボーナストラックっぽい色もあって、評価が一番分かれるとしたらそこなのかもしれないとは感じましたが。

 いずれにしても、このアルバムはPerfumeだからこそ成り得たアルバムであることは間違いありません。3人の素晴らしさも勿論ですが、それ以上に裏方やファンを含めた全てのPerfumeに関わる人々が作り上げた内容と言って差し支えないでしょう。そもそも「ポリリズム」から今年で10年目、この勢いが現在でも衰えないどころか増しているとまで感じさせるのは歴史的に見ても異常なことです。男性アーティスト・バンドでそういった前例はあっても女性アーティスト・特にダンスを主体とするタイプでは過去にないこと。ゆえに今後のPerfumeが歩む道は常に新しい歴史になるわけです。今までも十分そうでしたが今後は更にその傾向が強まることでしょう。既に日本ではレジェンドの存在となっていると言って差し支えないPerfume。そのストーリーはまだまだ終わりの日を迎えることはなさそうです…。






posted by Kersee at 22:19| Comment(0) | アルバムレビュー(女性J-POP) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。