穴空(初回生産限定盤A)(Blu-ray Disc付) - 私立恵比寿中学
穴空(初回生産限定盤B) - 私立恵比寿中学
穴空 - 私立恵比寿中学
(楽曲レビュー)
1.埋めてあげたい
物語風に朗読されるナレーションは比較的ノーマルですが、他のメンバー全員が効果音を演じることでこんなにも締まりのない内容になるんですね。異常なユルさが支配していて、結局最後はナレーションも壊れてしまいます。こんなのが4分半も繰り広げられるなんて、とってもアナーキー。
2.ゼッテーアナーキー
バンドロック全開の、アイドルソングの中でもトップクラスにストレートなカッコ良さを持っているナンバー。平成初期のヒット曲っぽい印象がありますが、楽曲提供はユニコーンのABEDON。納得。
3.春休みモラトリアム中学生
エビ中らしい表現で学生恋愛を描いたロックナンバー。勢いもありますが、それ以上にメロディーと歌詞の良さが光る楽曲ですね。意外と聴かせるナンバー、と言っても良いかもしれません。
4.ポップコーントーン
おなじみたむらぱんの楽曲提供。この曲も生演奏ロックテイスト。Cメロからラストサビの展開と、中学生のまま少し大人になった視点から描いた歌詞が特に聴かせます。
5.面皰
面皰と書いて”にきび”と書くこの曲は吉澤嘉代子の楽曲提供。今までありそうでなかった、ニキビを全面的に押し出した歌詞。ニキビは中高生にとって大変な悩みの種なんですが、それを描いた歌詞は乙女心にちょっとクスッとさせる場面も加わって、非常に秀逸。童謡っぽく仕上げた楽曲の雰囲気は70年代アイドルらしさもあってこちらも素晴らしい内容。今までのどの曲にも似ていない新鮮さととびっきりのかわいさ。是非コマーシャルに、と思って調べたらしっかりクレアラシルのタイアップ曲になっていました。アイドルが歌うにはこれ以上相応しいものがあるのかと思えるくらいの、名曲中の名曲。
6.エビ中出席番号の歌 その2
その1は4年前に歌われていますが、まさかのその2が3rdアルバムに収録。確かに当時とメンバーは結構入れ替わっていますが。小林歌穂と中山莉子の歌詞は今回が初めてで、それ以外のメンバーも微妙に歌詞が変わっています。聴き比べるのも一興でしょうか。
7.マブいラガタイフーン
次の曲に繋げる役割のInterlude。ゲームミュージックをバックにしたラップミュージック、みたいな。
8.夏だぜジョニー
昨年6月リリースのシングル表題曲。とってもアナーキー、と言うより非常にファンキー。迫力たっぷり。
9.MISSION SURVIVOR
KEYTALKの首藤義勝が楽曲提供。お祭りモードのリズム・メロディーの使い方はまさしくKEYTALKの音楽です。ただしサウンドは打ち込み全開で全く違う内容。その分編曲の自由度がバンド以上になっていて凄いことになっています。エビ中の明るさにはまさにピッタリ、この曲も今作を飾る名曲と言って差し支えないでしょうか。
10.ナチュメロらんでぶー
上の4.が1stアルバム『中人』収録曲「大人はわかってくれない」と対になっているとしたら、この曲は「誘惑したいや」と対になっている楽曲と言えるでしょうか。いずれもたむらぱんの楽曲提供。ちょっとクスッとくると同時に切なさも感じさせる歌詞と、これ以上なく美しい旋律に彩られたメロディーとベースライン、そして所々入るロングトーンの歌唱。絶妙さとバランスの良さが最大限に出ているこの曲は、本作どころかエビ中の過去作を含めてもトップクラスの凄まじい名曲、おそらく今年の中でも最上位に入ると思います。たむらぱんとエビ中の相性は、もはや異常レベルと言って差し支えないかもしれません。
11.あな秋いんざ夕景
ひたすら読み上げられるゆる〜い川柳。時々字余り、無駄に入るエコー。秋ですねぇ。
12.ポンパラ ペコルナ パピヨッタ
五五七二三二〇名義で昨年発表された楽曲。ココナッツサブレ50周年を記念して作られたユニットらしいです。編成はギター5人にドラム3人、バンド×合唱という方向性らしいです。すごくアナーキー。タイトルを連呼するサビを初めとして、前衛的な要素満載で色々と謎な楽曲ですが作曲は菅野よう子。とんでもない大物です。
13.お願いジーザス
フジファブリックの加藤慎一が楽曲提供。一つ一つの言葉をじっくりと聴かせるバラード。この曲もエビ中にとっては新境地と言える内容でしょうか。バックの演奏はまんまフジファブリックのメンバー、そのままセルフカバーするかもしれません。
14.全力☆ランナー
AKB48や乃木坂46を多く手掛けている杉山勝彦の楽曲提供。ラスト近くの曲順に置くとまさにしっくりくる、アイドルらしさに満ち溢れた王道ソング。エビ中に限って言うとこれまた過去にあまりないタイプなので、かえって新鮮。
15.スーパーヒーロー
昨年10月リリースのシングル表題曲。単体で聴いても名曲ですが、14.と続けて聴くと余計に説得力を増しますね。カッコ良さと強さを兼ね備えた、あらためて感じる素晴らしさ。
16.参枚目のタフガキ
デビュー当時からお世話になった前山田健一がアルバム終曲を手掛ける、それだけで非常に大きな意味を持つナンバー。トランスの要素が強い編曲に乗せられる、エビ中の愛が詰まった歌詞。不思議な魅力満載のサウンドは、彼女たちがまだまだ発展途上であることを示しているかのよう。
(総評)
『中人』は2013年の年間ベスト1位、『金八』は昨年の10位に選出しています。つまり言うとエビ中のアルバムはこれまで全くハズレ無しの名盤ばかりなんですが、今作は過去2作以上のクオリティに仕上がっている、まさに名盤中の名盤でした。今年は大変レベルの高い上位争いが予想されるので最終的な順位がどうなるかはまだ分からないですが、年間TOP10には確実に入ると思います。
”永遠に中学生””King of 学芸会”というのが彼女たちのキャッチフレーズだったかと思いますが、1.や11.のコントトラックを除いてそんな雰囲気は微塵も感じさせません。着実に成長しています。新しい制作陣も加わったことで楽曲のバリエーションが着実に増えていて、更に言うとこれまであった傾向の楽曲もまさしくバージョンアップしていると言いますか。前者は5.と12.、後者は6.と10.がその象徴になると思います。曲順もよく練られていて、特に終盤3曲の流れはこれ以上ないほどの仕上がり。先行シングルが前作や前々作と比べて個人的にはそこまで…という印象もありましたが、アルバムになるとこれまた完璧にハマっていました。冒頭コントの世界観がかなり独特なので、そこが一番評価が分かれるところかもしれません。ただ最初にハマればあとは全て名曲、特に中盤以降の流れは神がかりなほど。今のエビ中のカッコ良さ・かわいさ・強さを感じさせるアルバム、是非皆さんにも聴いてほしいところです。