
Vキシ(CD+DVD) - レキシ

Vキシ(CD) - レキシ
(楽曲レビュー)
1.牛シャウト!
軽快なリズムに乗って牛車を歌う、のっけからレキシワールド全開の作品。”牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛車”で締めるサビ、曲中の歌詞で用いられる”牛”の文字数は86、特にラストは”牛”45連発の後に”牛車!で落とします。
2.KMTR645
ネコカミノカマタリ(キュウソネコカミ)をゲストに迎えた作品。池田貴史だけでなくヤマサキセイヤも作詞作曲クレジットに加わっていることもあって、思いのほかキュウソ成分が高め。歌詞が大化の改新でなければ、池田貴史がゲストっぽい感じにも聴こえます。1と続けて聴くと”牛”コールの引きづられてる感が半端ないですね。あとレキシネームにもなっている中臣鎌足は目立ちますが、中大兄皇子の名前が全く出てきません。むしろ暗殺される側の蘇我入鹿の方が目立ってます。PVのイルカの着ぐるみは、歴史的事実にカッコつけてただ被りたいだけという感もあります。
3.一休さんに相談だ
アニメの『一休さん』テーマとは全く真逆の、大人の一休さんをリスペクト込めて歌い上げるバラード。
4.古今 to 新古今
古今和歌集も新古今和歌集も両方良いということを歌う曲。冒頭1分は打ち合わせでどっちがいいか語るトークになっています。
5.やぶさめの馬
ハッピー八兵衛(後藤正文 ex.ASIAN KUNG-FU GENERATION)をゲストに迎えた作品。エイトビートのリズムに乗せる流鏑馬の歌詞は比較的落ち着いた内容。
6.SHIKIBU
シングル表題曲にもなった、阿波の踊り子(チャットモンチー)をゲストに迎えた作品。”シキシキブンブン、シキブンブン”のコーラスだけというチャットモンチーの使い方、八嶋智人と変装して京都中を追いかけっこするPVなどツッコミどころ満載のナンバー。
7.寺子屋FUNK
2007年からお世話になっているシャカッチ(ハナレグミ)との共同作品。タイトル通り。
8.旧石器ベイベ
2007年からお世話になっている足軽先生(いとうせいこう)との共同作品。スタイリッシュに聴かせる旧石器。これがラップミュージックになるとは、当時の人は誰も思っていなかったことでしょう(当たり前)。
9.刀狩りは突然に
上質なメロディー・演奏に乗せられる歌詞は刀狩りに遭った農民の気持ち。刀狩りをメインにした楽曲は当然ながら前例がないわけですが、個人的にはもっと土の匂いをイメージした演奏が思い浮かぶので、ファンキーでスタイリッシュな編曲にするというのはちょっと意外。というよりあえてそう思わせる演奏にした印象もあります。
10.最後の将軍
森の石松さん(松たか子)をゲストに迎えた作品。最近の松さんはソロでの音楽活動がほとんど見られなくなりましたが、こういったゲストボーカル・コーラスでの参加は比較的よく見られます。インストゥルメンタルで聴くと大変上質なメロディーで作られたバラード、どんな泣ける歌詞が入るのだろうと想像させる内容ですね。Aメロからサビの入りまでは大変普遍的で良い雰囲気なんですが、”幕府”という言葉を聴いた瞬間に何とも言えなくなるこの気持ち。素晴らしいですね。なおこれが足利義昭についてなのか徳川慶喜についてなのかは皆さんの想像に任せます。
(総評)
前作『レシキ』あるいはその前の3作同様、今作も歴史を前面にフューチャーしつつ質の高い演奏・メロディーで構成される名盤に仕上がっています。今回はツッコミどころといいますか、笑いの面は前作と比べると慣れもあってか少し抑えめ。ただその分キャッチーな憶えやすさ、サウンドのクオリティはよりパワーアップしている印象があります。アルバムの流れも1.で完璧に掴んで10.でしっとり落としつつも泣かせる、という展開が素晴らしいですね。レキシ以外の池田貴史としての提供曲も「ねぇ バーディア」「U.B.U.」「頑張ってる途中」「侍唄」といった具合で大変質の高いもの。次作のレキシの作品も勿論楽しみですし、あえて歴史というテーマを外した”池田貴史”としてのアルバムも個人的には聴いてみたいです。