
Just LOVE - 西野カナ

Just LOVE(初回生産限定盤)(DVD付) - 西野カナ
(楽曲レビュー)
1.*Prologue*〜Let's go〜
目覚めの良い朝をイメージしたオープニング。そのまま次の曲に繋がります。
2.Have a nice day
『めざましテレビ』テーマソングというタイアップを最大限に意識して作られた、グッドモーニングナンバー。”がんばれ私!がんばれ今日も”というサビを中心に、通勤通学に向かう女子を応援する歌詞が大変素晴らしいです。いや男子も根本としては全く同じでしょう。こういう方向性の名曲は過去にもいくつかありますが、歌詞への親近感はこの曲が一番上かもしれませんね。間違いなく今年を代表する名曲で、特に朝7時半に聴きたい曲というテーマだと日本の5本の指に入るクラスではないでしょうか。
3.You&Me
綾瀬はるか主演の映画『高台家の人々』主題歌。あなたと私、2人の関係をカントリー風のサウンドに乗せて歌うナンバー。”あなたはネギ、私はニンジン”といった2番の歌詞がクスリとさせてくれます。聴きやすい曲調の上に歌詞もテンポ良くハマり、それでいて表現も面白いという。今の女性J-POPソロのトップにいることがこの曲一曲をもって証明されているかのようです。
4.トリセツ
昨年9月リリースからずっと歌詞が話題になり続けているナンバー。共感できるかどうかという以上に、ここまではっきりとテーマを決めて歌詞を作れるのが凄いことだとあらためて思います。
5.YEAH
ライブの盛り上げを意識した明るいナンバー。バンドなら間奏で紹介がありそうですが、残念ながらこの曲は打ち込みサウンドがメイン。
6.Wish Upon A Star
エレキギターと少しのパーカッションのみの、シンプルな演奏をバックに聴かせるラブバラード。彼女はライティング能力だけでなく歌唱力も素晴らしいので、こういうタイプの曲が過去あまりなかった気がするのはやや意外。
7.君が好き
こちらもピアノ演奏のみのシンプルなバラード。サウンドだけでなく歌詞も実にシンプル。女性の心の奥底から引き出したような言葉で作られる歌詞もそうですが、声とピアノの音だけで聴き惚れて感動できそうな楽曲です。
8.もしも運命の人がいるのなら
昨年4月のシングル表題曲。今年の選抜高校野球の入場行進曲でしたね。ピアノが奏でる綺麗な音は、7.と通して聴くと魅力が何倍にも膨れ上がります。これもまたアルバムならではという感想で、非常にうまさを感じます。
9.Thank you very much
シングル「あなたの好きなところ」カップリング曲。カントリーの色が前面に出ています。留守電メッセージから始まる牧歌的な曲かと思いきや、歌詞は”別れたから自由に一人で行動できる、Thank you very much”的な内容。女性ならではの発想がすごくよく出ていますね。一歩間違えるとドロドロになりそうな曲を、サウンドで相当薄めているのもこのアルバムの巧さだと思います。
10.Holiday
9.とは逆に、海外のR&B色がやや強いサウンドに乗せられるHolidayをただひたすら待ち望む歌詞。分かりやすい対比がこれまたうまく出ています。
11.I wanna see you dance
海外を意識するというより、エイベックスが好きそうなサウンド。安室奈美恵やE-girls辺りが歌っていてもあまり違和感ありません。やや低音の歌唱で聴かせるダンスナンバーという趣で、彼女にしては珍しくあまり歌詞が前に出ていません。
12.Set me free
聴かせるラブバラード。編曲の雰囲気はどちらかと言うと彼女がデビューした2000年代後半風。
13.Life Is Good
アルバム終盤、この曲はここまでの流れを"Life"という括りでまとめる感じでしょうか。
14.あなたの好きなところ
でもって今年4月リリースのシングル表題曲であるこの曲が、映画で言うエンドロールなんだろうと感じるところです。「トリセツ」でああだこうだ言っていても結局はこの曲のように「好きだよ」という気持ち、これが一番大事なことをあらためて感じさせるナンバーでもありますね。
15.*Epilogue*〜Just LOVE〜
1.と同じメロディーで、歌詞をラスト仕様にしたもの。これは今までの彼女のアルバムと同じ作りですね。
(総評)
今年はPerfumeや三代目J Soul BrothersにBUMP OF CHICKENのアルバムが示す通り、トップクラスのアーティストがトップに相応しい名盤を発表する年でもあります。このアルバムもまさしくそれに数えられる、女性J-POPソロのトップにあるべき名盤でした。元々の高いライティング能力やサウンドだけでなく、アルバム全体の流れや構成も非常に巧く作られていると同時に、守りに入るのではなく攻めを感じさせる作品の雰囲気。まさしく先述の3作と共通している部分だと思います。最近のシングル曲は以前にも増して面白さを感じさせる内容が増えていましたが、アルバムにも見事にそれが表れていましたね。勿論これまでの彼女のアルバムと比べても出来は数段上。今年を代表するアルバムであることは間違いありません。
「Best Friend」がもう6年前になるので人気アーティストの座についてから相当長くなってきましたが、彼女の地位はまだ揺るぎないどころかますます強固になっています。他の女性ソロ歌手にとっては、明らかに簡単には追いつけない高いハードルと化しています。次のアルバムまでにどういった世界観をまた見せてくれるのでしょうか。ただただ楽しみです。