2017年03月28日

ぼくのりりっくのぼうよみ『Noah's Ark』(2017.1.25)

Noah's Ark (完全生産限定盤) - ぼくのりりっくのぼうよみ
Noah's Ark (完全生産限定盤) - ぼくのりりっくのぼうよみ

Noah's Ark - ぼくのりりっくのぼうよみ
Noah's Ark - ぼくのりりっくのぼうよみ

1.Be Noble
2.shadow ☆
3.在り処
4.予告編
5.Water boarding -Noah's Ark edition-(2016.7.20 EP『ディストピア』) ☆
6.Newspeak(2016.6.22 配信Sg.)
7.noiseful world
8.liar
9.Noah's Ark
10.after that(2016.12.7 配信Sg.) ☆


 1998年2月生まれ、まだ10代のソロラッパー・ぼくのりりっくのぼうよみが贈る2ndフルアルバム。

 ラップメインなのでジャンルとしてはヒップホップですが、これまでのジャパニーズ・ヒップホップとは全く違うイメージの音楽だと思います。スチャダラパー、EAST END、KICK THE CAN CREW、RIP SLYME、RHYMESTER、AK-69…。先達とは全く違う通称”ぼくりり”の音楽は、サウンドが先にきてメロディーがたまたまラップとして表現されているという印象を個人的には持ちました。ヒップホップが得意でない人にとっても入りやすいというより、普段ラップミュージックを聴かない人の方が違和感なくすんなり頭に入る音楽ではないかなという気がします。

 映画『3月のライオン 前編』主題歌の「Be Noble」で早速飛ばします。ギシギシと鳴り渡るトラックに、キャッチーで美しいサビのメロディーがとても心地良く響きます。「shadow」は90'sに近いテイストのサウンド、あるいは1978年頃にデビューした当時の原田真二に近いかもしれません。間奏でピアノの奏でる音が特に効果的、高尚なオーケストラも似合う雰囲気。その中で直後に乗せられるリリックは圧巻、その一言に尽きます。

 「在り処」「予告編」、心地良く響く音楽はロックでもジャズでもクラシックでも、どのジャンルを言われてもしっくりくる雰囲気。それだけ多くの要素を吸収しているという証でしょうか。「Water boarding」は浮遊感の中で告げられる終の宣告。言葉だけでなくサウンドでも見事に表現していることに舌を巻きます。

 「Newspeak」を経て、「noiseful world」は一音ごとの長さが耳に残るナンバー。スケールの大きい歌詞も胸に突き刺さります。「liar」は、このアルバムの中で一番ラップミュージックらしい楽曲と言うべきでしょうか。カッコ良さの中に、畏怖という感情も同時に抱いてしまいそうになるナンバーです。

 浮遊感と輪廻をコラボレーションさせたようなタイトルナンバー「Noah's Ark」を経て、ラストに演奏される「after that」。ジャジーでファンキーな編曲にただ”前向き”という言葉だけで片付けられない歌詞、後半に入れられるラップパート。どことなく小沢健二「ある光」を思い出させるのは私だけでしょうか。勿論単純に似ているとかそういう意味ではなく、ぼくりりの頭に描がれたものがたまたま20年前のオザケンとも共通している部分があるような。1997年12月、実は「歌うたいのバラッド」「強く儚い者たち」などがリリースされた時期でもあります…。

 というわけで、非常に考え込まれて、細部まで厳密に作り込まれたこだわりの名盤ではないでしょうか。それゆえに流しで聴いた初聴ではどうかと感じた部分もありましたが、聴き込むたびに彼の凄さをあらためて噛みしめることが出来るような。これでまだ10代なのですから、恐れ入ります。すごく分かりやすいタイプの音楽ではないので、世間一般で最終的にどう評価されるのかは分からないですが、玄人筋からは間違いなく”不世出の天才”として後世まで語り継がれる存在になりそうですね。小沢健二、中村一義、坂本慎太郎、曽我部恵一…。奏でる音楽の種類は全く別として、辿る路線としては彼らの方が間違いなく近くなりそうな気がします。





posted by Kersee at 01:05| Comment(0) | アルバムレビュー(男性J-POP) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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