
鈴木このみ3rdアルバム「 lead 」【初回限定盤】 - 鈴木このみ

鈴木このみ3rdアルバム「 lead 」【通常盤】 - 鈴木このみ
1.Love is MY RAIL(2016.8.3 Sg.)
2.「わたし」をくれたみんなへ
3.yell!〜くちびるからはじまる魔法〜
4.One day sky
5.Tears BREAKER with piano -inst-(2013.8.28 Sg.)
6.MY SHINING RAY
7.BE THE ONE
8.Absolute Soul(2015.2.18 Sg.)
9.東のシンドバッド ☆
10.Beat your Heart(2016.1.27 Sg.)
11.Redo(2016.5.11 Sg.)
12.Moment ☆
13.全部君がいたから知ったんだ ☆
『18 -Colorful Gift-』以来、2年ぶりとなる通算3枚目のフルアルバム。
類稀な歌の才能を持つ彼女ですが、前作のアルバムは少々疑問が残る出来栄えでした。その反省を活かしたということでしょうか、今作は非常に地に足の着いた、楽曲・流れ双方において完成度の高い作品に仕上がっています。
ミディアムテンポの「Love is MY RAIL」からスタート。オープニングからダイナミックに押すのではなく、歌詞で聴かせる楽曲から始める部分に”おっ”と思わせます。そこからの「「わたし」をくれたみんなへ」「yell!〜くちびるからはじまる魔法〜」「One day sky」、最初の4曲は歌声そのものの凄さよりも歌詞表現の確かさをより感じさせます。良い歌詞と良い表現が合わさって聴く方へ直に良さがより伝わるという好循環。メッセージ性のある1.と2.からライブ定番曲の色がある3.、そこからデジロックの4.に移行する流れもなかなか。4.は少しポップなHIGH and MIGHTY COLORという印象もあるでしょうか。
5.のインストは4年前のシングル「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」と両A面で収録された曲。なぜこの曲が選曲されたのかはよく分かりませんが、アルバムの繋ぎとしては大変効果的な役割を果たしています。直後の「MY SHINING RAY」は荘厳なバラード、ピアノのインストから一体に繋がっているかのアレンジ。「BE THE ONE」はシングル表題曲でも全く不思議ではない正統派バンドロック。ストリングスやシンセサイザーなどの音も大変効果的に仕上がっています。
「Absolute Soul」は大変異例とも言える、前作アルバムに引き続いての収録。ただしリアレンジされた前作と違い、こちらはシングルバージョンをあらためて。定番曲をここに入れることで、”ここから後半戦です!”というMCのもと始まるライブを追体験できるセクションに入ります。「東のシンドバッド」もこれまたシングル表題曲としても違和感がまるでない新録曲。彼女らしさがとてもよく表れている名曲に仕上がっています。実際に表題曲となっている「Beat your Heart」「Redo」は説明不要・問答無用の四字がピッタリ当てはまるでしょうか。歌手・鈴木このみの真骨頂が出まくっている、超迫力のナンバーとなっています。
ライブで言うとアルバムトリ前がラスト、アルバムラストがアンコールという位置づけになるでしょうか。「Moment」は”デビュー5周年記念曲”と銘打っても良さそうな、感謝の気持ちが聴く方にも非常に伝わるナンバー。締めにはこれ以上ないという仕上がりになっています。実質アンコールとも言える「全部君がいたから知ったんだ」もほぼ同様ですが、”輝き””煌めき”という単語はこちらの方がよりしっくりきます。また、アルバム最後の曲でありながら終末感はあまりなく、走り気味に終わるストリングスが次のアルバムまでの活動へ繋がっていくことを暗示しているような。そんな気持ちになる楽曲という感想もあります。
以上です。冒頭にも書いた通り、一つ一つの楽曲だけでなくアルバムの流れも非常によく練られた名盤です。20代になったばかりの鈴木このみの出世作と言って差し支えないでしょう。アニソンという範囲内だけでなく、女性ソロ全体で考えても声量・表現の上手さは相当上位に入る上に、今回は作品としても文句なしに万人に薦めることが出来る内容に仕上がっています。KADOKAWA/メディアファクトリーというレーベルはソニーやユニバーサルほど大きい規模ではないので、どうしても宣伝など知名度を上げたり活動範囲を広げたりする面で不利な部分があります。タイアップになったアニメを見たことある人なら、おそらく彼女の歌の上手さは伝わっているかとも思いますが、今作はアニソンを普段聴かない人にも是非聴いて欲しいです。音楽ファンの間で彼女の名前や歌の凄さが伝わっていないのなら、それは間違いなく損失にあたります。楽曲だけでなく”ものすごく歌が上手い”という程度でも良いと思うのでとりあえずまずは耳にして欲しい、そう願うところであります。