2017年06月06日

私立恵比寿中学『エビクラシー』(2017.5.31)

エビクラシー(期間生産限定盤) - 私立恵比寿中学
エビクラシー(期間生産限定盤) - 私立恵比寿中学
エビクラシー - 私立恵比寿中学
エビクラシー - 私立恵比寿中学

1.ゑびすとてたまわんせむ
2.制服"報連相″ファンク
3.感情電車 ☆
4.紅の詩
5.コミックガール
6.さよならばいばいまたあした
7.なないろ ☆
8.君のままで
9.藍色のMonday
10.春の嵐 ☆
11.フォーエバー中坊

1.制服"報連相″ファンク(中山ver.) ☆
2.感情電車(小林ver.)
3.紅の詩(柏木ver.) ☆
4.コミックガール(廣田ver.) ☆
5.君のままで(安本ver.)
6.藍色のMonday(星名ver.)
7.春の嵐(真山ver.)


 あの日から約4ヶ月。メジャー4枚目となるオリジナルアルバムは、全曲新曲。私立恵比寿中学は『中人』『金八』『穴空』と、リリースされたアルバム全てが文句なしの名盤と言えるクオリティを誇っています。ですが今作は、そんな次元をはるかに超越しています。アイドルどころかJ-POP全体を見渡しても、これだけの作品は滅多にないと断言できる内容になっています。当ブログのアルバムレビューではお気に入りの3曲に☆をつけていますが、本音を言うと全曲つけたいです。それくらいに今の彼女たちと制作陣・チームの気持ちを感じさせる、素晴らしい楽曲が並んでいます。

 オープニングを飾る「ゑびすとてたまわんせむ」は行進曲調のアンセム。演奏だけでなく、”ララララ”と歌う声も大変勇ましい仕上がり。『金八』『穴空』ではかなり斜め上なコントがオープニングを飾る形ですが、それと比べれば間違いなくアルバムの入り口としては入りやすい内容になっています。

 間髪入れずに始まるのは「制服"報連相″ファンク」。いきなりこれまでのエビ中にないタイプの楽曲で、学芸会(=ライブ)で初めて聴いた時は正直面食らいました。ですがあらためて聴くと、のっけからものすごいです。在日ファンクがホーンで参加しているサウンドは恐ろしいほどカッコ良く、ラップ中心に構成される各パートもとんでもないことになっています。これをカバーできるアイドルは日本に存在しないのではないでしょうか、それくらいに高いパフォーマンスを要求される曲です。ただ歌詞は”報告!連絡!相談!”という具合。文字で見るとほとんど内容ありません。そういう意味では、エビ中らしさと新鮮さ、更に言うとこういう曲も出来るようになったという成長。多くのことを感じさせるナンバーに仕上がっています。

 「感情電車」はPVがアップされています。メンバー7人が箱根を旅するという内容ですが、りななんのInstagramで最後の更新になったのが家族との箱根旅行でした。楽曲提供は「誘惑したいや」「ポップコーントーン」「ナチュメロらんでぶー」など、これまでエビ中に数多くの名曲を送り続けているたむらぱん。”感情”と”環状”をかけた歌詞と振り付け、それは”どこにも止まれないよ”のサビ終わりの言葉が特に象徴しています。そして何よりぽーちゃんをメインにすることで、この曲ならではの優しさが溢れるくらいに表現されています。リンガーハットのCMソングとして起用されていますが、おそらくサビだけ聴くのと全体を聴くのとでは印象がかなり変わるのではないでしょうか。

 「紅の詩」は3年前に「ハイタテキ」を提供したTAKUYAの作詞作曲。エビ中の境遇とも重なる部分がいくつも存在している歌詞が聴きどころ。”切なくて飛べない豚になりそうだ”というくだりは「紅の豚」とかけています。”赤く染まった紅の舞台”もレッドカーペットか紅白歌合戦を示唆しているかのような。いずれにしても他の人には真似出来ないような表現の凄さ、でもって気がつけば自然と口ずさんでしまうメロディーの良さ。JUDY AND MARYの頃から数多くの名曲を作っていますが、ここでもまた素晴らしい仕事をしています。

 「コミックガール」の提供はなんと四星球。”日本一泣けるコミックバンド”というキャッチフレーズで、最新アルバムのタイトルは『メジャーデビューというボケ』。というわけでやはり色々ぶっ飛んだ歌詞ですが、基本に忠実なメロディーで盛り上げるロックというのはバンドとしっかり共通しています。ソロパート周りのガヤもエビ中の大きな長所ですが、それが最も生きているナンバーでもあります。そして楽曲提供自体が初めてということもあって、ボーカル・北島康雄はじめとしてメンバーもノリノリで演奏。”コケコッコー!”と叫びながら入る北島さんの暴走具合も笑えます。そんな彼が応援コメントとして残した言葉は”僕たちの方が、岡崎体育より応援していますからね!”とのことでした。

 極めて賑やかな「コミックガール」と対照的に、「さよならばいばいまたあした」は聴かせる曲。真山→柏木→安本→中山→小林→廣田→星名とソロパートが受け継がれてラストにみんなで歌うという構成。なにげない日常と風景を在りし日の思い出のように歌っている楽曲ですが、”さよなら”を歌っていながら”またあした”というのが非常に重要なポイントになっていると個人的には解釈。7人の歌声は勿論、楽曲提供したYogee New Wavesの演奏もすごく温かく聴こえるナンバーになっています。

 さて7曲目に収録された「なないろ」ですが、これはもう何から語ればいいのでしょうか。レキシの池田貴史は「頑張ってる途中」「U.B.U.」の楽曲提供だけでなく、2012年〜2014年まで一緒にレギュラー番組も数年間やっていた関係があります。メンバーがリアルに中学生だった時期から知っていることもあって、思い入れも非常に強いです。ありったけの思いを込めて作られたこの曲は、7人での新しいスタートという意味を込めた楽曲であるとともに、気持ちは8人のままだよというメッセージも入っています。なないろをもじると、りななんの誕生日である7月16日。偶然だと思いますが今年のツアーファイナルはまさにその日東京国際フォーラムでの開催。彼女のメンバーカラーは青。7色の虹がメンバーだとすると、それが架けられる空がもう1色、松野莉奈のことを指しているのでしょうか。特にPV込みで見ると、そんな思いにかられて仕方がありません。ちなみに今年1月3日、Negiccoとのジョイントライブで「ねぇ バーディア」(これも池ちゃん提供の超名曲)を歌った際にエビ中のメンバーはものすごく良い曲!と大絶賛していました。レコーディングの際は、”バーディア超え”というのもキーワードになっていたようです。

 「君のままで」もまた聴かせる楽曲。「さよならばいばいまたあした」「なないろ」「君のままで」、この3曲には何度も”君”という単語が登場します。メロディーはアーティスティックながらも、強く特徴的というわけではありません。ただそれゆえに、一つ一つの言葉が余計に胸に沁みる楽曲になっています。それにしても、このアルバムの中盤3曲の流れ。メロディーに乗せられる歌の気持ちの伝わり方が半端ありません。他のアルバムには絶対に出せない唯一のものと断言して良いレベルだと思います。

 「藍色のMonday」はCMJK提供のテクノポップ。浮遊感あるサウンドにどこか切なげな歌詞。色々調べたところ、この曲はNew Order「Blue Monday」のオマージュだとか…(参考ブログ)。これもまた、色々と感じ入ることの多い一曲に仕上がっています。

 「春の嵐」の提供は、sora tob sakanaのサウンドプロデュースで注目されている照井順政。文字通り嵐のように駆け抜ける音楽は疾走感と例えるには少し違う、今までほとんど味わったことのない感覚。春一番は春の訪れを告げる嵐で季節的には”冬の嵐”と呼べるものですが、春の嵐は春二番とも呼称される事象。そんな春の嵐が過ぎても繰り返し吹き荒れる風、それと揺れ動く心情をミックスさせた歌詞。どことなく悲壮感を感じさせるとともに、前向きな気持ちも十二分に伝わるトラック。ものすごい曲です。それにしても微妙にリズムをズラして譜面に入れているようなメロディー、sora tob sakanaは普段どういった曲を歌っているのでしょうか。要求される技量が半端なく高いように思うのですが…。

 ラストはお馴染み前山田健一提供の「フォーエバー中坊」。メジャーデビュー前の曲に「永遠に中学生」がありますが、それの現在バージョンと言ってほぼ差し支えないと思います。途中思いっきり「UFO」のオマージュが入ったりするなど、ヒャダインらしくふざけまくっているサウンドですが、聴いている方としてはなぜか泣けてくるナンバーです。年を経て明らかに色々な意味で進化しまくっていてついつい忘れがちになりますが、コンセプトはあくまで”King of 学芸会””永遠に中学生”。結成当初のキャッチフレーズは”キレのないダンスと不安定な歌唱力”。リアル中学生がいなくなった今でもこの本質は変わらないこと、そして何より”エビ中やってて ほんとに良かったなあ”で始まる歌詞。このアルバムの締めに持っていくには、完全にこれしかないという選曲ですね。

 さて、本編だけで随分と語りましたが、初回生産限定盤にはそれぞれの楽曲のメンバーソロver.のCDも付属されています。これもまた出色の出来といいますか、思いのほか通常ver.と違いがありましたので、あらためて書いていきます。

 「制服"報連相″ファンク」の中山莉子ver.は、通常の何倍も濃くファンキー。”爆笑!””弘法!”と全員が入れるガヤも彼女のソロなので、パワーが半端ありません。7人のエビ中が全員りこてぃに化けているかのような、そんな感じのトラックになっています。

 「感情電車」の小林歌穂ver.は、彼女の純粋で素朴な人柄がより伝わるトラックになっています。特にサビは大きく違いますね。全員パートの方は元気な印象の方が強かったですが、こちらは優しさがより伝わってきて包み込まれるかのような。

 「紅の詩」は柏木ひなたver.。彼女の歌唱力の高さは以前から言われていますが、その要因は歌いっぷり。一つ一つの言葉をハッキリと歌うことに関しては、アイドルだと彼女の右に出る者はいないと思います。それによって歌に対する気持ちも自然に聴く方にも伝わるわけです。この曲に関しては、ソロの方が完成度高いかもしれません。メチャクチャカッコ良いです。その一言で十分でしょう。

 「コミックガール」の廣田あいかver.に至っては、通常ver.と別モノと考えて良い出来です。北島さんが必要以上に目立っているのは共通ですが、それ以上にとんでもないぁぃぁぃの破壊力。何パターンの声色を持っているのでしょうか彼女は。主旋律だけでも結構な使い分けですが、ガヤも入れると本当にとんでもないことになっています。ラストのオチもまたこのver.しかない内容、この1曲のために初回生産限定盤を選んでも絶対に悔いのないレベル。声質に関してはレッスンして変わる類のものではない天性のもの。そういう意味では廣田あいか、以前からずっと感じていたことではありますが間違いありません。天才です。

 「君のままで」は安本彩花ver.。”君”が誰のことを指しているのかはこの曲だけだとハッキリ分かりません。ただインタビューを見て断言できるのは、彼女と松野莉奈は大親友であるということ。それだけでこの曲に対する気持ちが分かるというものです。

 「藍色のMonday」は星名美怜ver.。360度どこから見てもアイドル、ルックスでも名前でも星のような輝きを見せる彼女。宇宙のような雰囲気のこの曲にはまさに打ってつけ。淀みのない明るくかわいく綺麗な歌声も、楽曲の雰囲気にすごく合っています。

 「春の嵐」は真山りかver.。この曲も全体ver.より彼女のソロver.の方が、より説得力を増して聴こえるような。こう考えると、エビ中は本当に素晴らしい歌い手の集まりなんだなぁと、しみじみ感じます。

 以上です。これだけ長々と書いた以上、何も書くことはありません。皆さんCD買いましょう。出来ればメンバーソロver.のCDがある初回生産限定盤を強くオススメします。これだけ色々と感じさせるアルバムは二度と聴けないかもしれません。間違いなく、21世紀を代表する最高の名盤です。




posted by Kersee at 01:27| Comment(0) | アルバムレビュー(アイドル) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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