2018年05月16日

カノエラナ『「キョウカイセン」』(2018.2.7)

「キョウカイセン」(初回限定盤) - カノエラナ
「キョウカイセン」(初回限定盤) - カノエラナ

「キョウカイセン」 - カノエラナ
「キョウカイセン」 - カノエラナ

1. カノエラナです。改
2. トーキョー(2017.2.15 Al『カノエ上等。』) ☆
3. おーい兄ちゃん(2016.11.25 デジタルSg.)
4. サンビョウカン
5. 恋する地縛霊(2016.7.1 デジタルSg.)
6. 地縛霊に恋をした
7. 嘘つき
8. たのしいバストの数え歌(2017.7.19 Al『カノエ暴走。』)
9. エスカレーターエレベーター
10. ダイエットのうた(2017.7.19 Al『カノエ暴走。』) ☆
11. あーした天気になぁれ
12. シャトルラン
13. ツキウサギ
14. ヒトミシリ(2015.2.4 Al『ぼっち。』) ☆


 佐賀県唐津発、注目のシンガーソングライター・カノエラナの1stフルアルバム。多くのシンガーソングライターを輩出している音楽塾ヴォイス出身。


 自己紹介ソング「カノエラナです。改」はデビューミニアルバム『「カノエラナです。」』収録曲のバージョンアップ。歌詞も身長が1cm改変されているなど少しだけ変えて、編曲は少し大人な雰囲気を入れて。ライブでもおそらく毎回歌われると思いますが、環境が変わると楽曲もどういった発展を遂げる形になるのでしょうか。本人の躍進とともに楽しみにしたいナンバーです。


 「トーキョー」は昨年のミニアルバム『「カノエ上等。」』リードソング、ビルボードHOT100にもランクインしました。ポップなサウンドに、ところどころ入る佐賀の方言が心をくすぐらせます。遠くから上京してきたアーティストが描く東京、過去にもそれぞれ多くの形がありますが彼女の場合はこういった形で。思いっきりJ-POP王道をいくような作りが、このアルバムにおいては後々よく効いてくる形になります。


 不良の男を若い女性が攻撃的に歌う、というシチュエーションも過去のJ-POPではあった形。「おーい兄ちゃん」ですが、聴き応えは抜群。カッコ良く作られたトラックもそうですが、声質・発声ともにかなりの実力を感じさせます。こういう迫力がある楽曲は、一定以上に歌が上手くないとまず成立しないですからね。


 「サンビョウカン」は見ごたえのある映像・聴き応えのあるラブバラード。そのまま何かしらの映画主題歌に起用してもいいのではないかという気がします。


 発想力が特にスパークしているのは中盤以降、まずは「恋する地縛霊」「地縛霊に恋をした」。それぞれの立場から地縛霊の恋を2曲続けて描くアルバムは本邦初ではないかと思います。ジャズ風のアップテンポ・ギターを基調としたバラードと対照的な楽曲ですが、どちらも管楽器の音が大変良い味を出しています。その後の「嘘つき」は裏声も入る王道バラード。今の段階ではアルバムにおける新曲ですが、状況が変わるとシングルでこういった曲が多く発表されるケースが出てくるかもしれません。歌声よりも何よりも、中盤の間奏ギターソロに偉大な先人シンガーソングライターの面影も感じさせます。


 「たのしいバストの数え歌」はカノエラナを語る上で良くも悪くも外せない存在になりそうな楽曲。言うまでもなく歌詞が突っ走っている楽曲ですが、PVが更に突っ走っているのは高ポイント。「エスカレーターエレベーター」も打ち込み全開・というより8ビットミュージック。ここ数年たまに聴けるタイプの編曲をモロにやっている、といったところでしょうか。


 「ダイエットのうた」も童謡風の雰囲気に飾り気ゼロの歌詞が異質感ありあり。「たのしいバストの数え歌」と同様、トラックだけで聴いてもアクが強い楽曲ですが映像で見ると余計に増幅されます。特にこの作品は凄いですね。訳の分からない世界観とボビー・オロゴンを呼ぶという妙な人選に爆笑させて頂きました。間違いなく2017年トップクラスの珍PVだと思います。


 マジメなモードに戻って「あーした天気になぁれ」、そこから「シャトルラン」。ミニアルバムからも収録されていることもあってか、今回のアルバムはPVが作られている楽曲が非常に多いです。どちらかと言うと声優アニメ系アーティストが歌いそうな応援歌の楽曲は単純に聴いて勇気づけられるという効果だけでなく、PVにおける本人のコスプレ?もオススメ。ちなみに本人は思いっきりアニメ好きなのだそうです。ラスト前、「ツキウサギ」は和楽器の音を効果的に使っているアップテンポ曲。


 「ヒトミシリ」はその名の通り、人見知りの人間に強く強く共感できる歌詞が満載の楽曲。そういえば”3回まわってワンと鳴く”という歌詞は中盤のバストの曲にも出てきましたね。カノエラナのパワーワード・キャッチフレーズとして定着させていく方向なのでしょうか。そこのところが少し気になります。


 楽曲や言葉の引き出しの多さ・先人へのリスペクトと本人独自の個性を混ぜ合わせたバランスの良さ・PVのセンス・歌声の良さ。万人ウケではなく、ちょっと好みが分かれるかもしれないと感じさせるのも面白い部分ですね。昨年の「トーキョー」で知った身からすると、まだこの1年で本来の実力ほど知られていない状況ではないかとも感じます。現在メディアや各CDショップで注目されているアーティストは実力があって素晴らしい方々に満ち溢れていて、実際彼女もその一人だとは思いますが、どうでしょうか。カノエラナの卓越した個性とセンスが満ち溢れるアルバム、是非皆さんにも聴いて頂きたいところです。

posted by Kersee at 17:32| Comment(0) | アルバムレビュー(女性J-POP) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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